地域包括ケアシステムが推進される中、患者・家族を含めた多職種・他機関が参加するカンファレンスが連携・協働の重要なツールとなっています。豊かなカンファレンスを運営するための基本技法を丁寧に解説した『チームの連携力を高めるカンファレンスの進め方 第2版』の編著者・篠田道子さんに、改訂のポイントなどをうかがいました。
――『第2版』発行の背景を教えてください。
『初版』は、多職種が参加するカンファレンスでファシリテーター役を担う医療機関の看護師向けに、カンファレンスの基本的な知識と技法を実践的に示した書籍として、2010年に発行しました。その後、病院内外で多職種連携・協働が進められ、患者・家族を含めた多職種が参加するカンファレンスが定着しつつあります。さらに、わが国がめざしている地域包括ケアシステムの構築には、多職種・他機関が参加するカンファレンスが重要なツールになるといっても過言ではありません。これまで以上に豊かなカンファレンスの運営が求められています。このような背景を踏まえ、内容を充実させて『第2版』としてまとめました。
――「序章」を追加されましたね。
まず、本書がめざす4つのコンセプトが読者にしっかりと届くようにと、「序章」を追加して詳しく説明しました。4つのコンセプトとは、
①民主的な手続きと丁寧な合意形成
②チームメンバーによる相乗効果
③患者・家族の主体性の尊重と、チームメンバーの専門性の調和
④ファシリテーションスキルによる豊かなカンファレンス
です。『初版』からこの4つのコンセプトは変わっていません。時代が変わっても変わらないものを、より丁寧に伝えたいという、私たち著者のメッセージを込めています。
――『第2版』で強化されたことは何ですか。
読者が充実を求める内容を強化しました。幸いなことに私たち著者は本書を使った研修会を運営する機会に恵まれ、そこで参加者の生の声を数多く聞くことができました。これらの声を反映させて、司会者や板書係の知識と技法、カンファレンスの振り返りや評価など、より実践的な内容にしました。特に看護職はカンファレンスの司会を担うことが多いため、司会者の重要な技法である、「場づくり」「沈黙への対応」「発問と要約」を充実させました。
また、地域包括ケアシステムで重要となる、地域ケア会議やサービス担当者会議など、地域の多職種が参加するカンファレンスの解説を追加しました。医療関係者の中には、地域包括ケアは医療との関係は薄いという誤解もあるため、イメージがつきにくいと思います。地域包括ケアは、高齢者の在宅生活を支援する仕組みであることから、病院もメンバーの一員としてこれを尊重して、最大限協力する姿勢が求められます。病院医療のバックアップが不可欠で、医療と介護、病院と在宅をつなぐツールがカンファレンスであることは言うまでもありません。
――司会者に必要とされるファシリテーションスキルについて教えてください。
本書では、司会者とファシリテーターを同義語で使用しています。ファシリテーターとは、ファシリテーションスキルを使いながら、参加者の意見や思いを引き出す、メンバー間の相乗効果を発揮させて豊かな提案をする、さらに出された意見を構造化して分かりやすく加工する、そして最後に合意を取り付ける……。ファシリテーションスキルは、カンファレンスだけでなく、会議、事例検討会、ワークショップ、グループワークなどあらゆる場面に使えます。
――最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
ファシリテーションとは、「中立的な立場でチームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大となるように支援すること」です。つまり、ファシリテーションスキルを使ってチームやカンファレンスを動かす司会者(ファシリテーター)は、中立的な立場で人と人・チームとチームのつながりに働きかけてチームワークを引き出し、人々を束ね方向づけて成果を導く役目を担います。ファシリテーションスキルを身につけることは、チームの「連携力」を磨くことにもつながります。
本書が、チームケアや地域包括ケアシステムの構築に少しでもお役に立つことを願っています。
-「看護」2015年11月号「SPECIAL INTERVIEW」より –