地域ケアの今(41)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

「舌でつぶせる料理を出すレストラン」

の出現に思う

文:鳥海房枝

 

高齢社会の到来をしみじみと感じるのは、商売の対象を高齢者とするCMがさまざまな分野に及んでいるのを目の当たりにするときです。これは、自らが高齢者の範疇に入る当事者だからかもしれません。以前、本欄に、全国のどこに行っても通所介護サービスの送迎車が必ず目に入ると書いたことがあります(2016年6月号)。今日、介護サービスは日本の隅々にまで行きわたり、地方都市で目立つ大きな建物の多くは高齢者ケア施設です。

 

介護保険法が施行されてから20年を迎えようとしています。同法の施行当初は、要介護認定の申請やサービス利用を躊躇する人々を「当然の権利」という言葉によって、いかに掘り起こすかが議論されていました。それが現在では、介護サービスの利用は多くの人々にとって特別なものではなくなりました。そして介護領域だけでなく、老いや死にまつわるものとして、健康食品や化粧品、葬儀からお墓の管理までが宣伝されています。これらは明らかに高齢者をターゲットにした商業活動です。高齢者人口が3割に達しようとしているのですから、高齢者を対象とする商業活動が活発になるのも当然です。

 

このような動きが、介護現場などより先行していると思わされる出来事がありました。

 

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SPECIAL BOOK GUIDE 「生活を重視した看護」を事例で学べる! 『高齢者看護の実践能力を育てる 高齢者ケア施設の看護をベースにして』が刊行

高齢者ケア施設では、入居者の“生活”をベースに本人の思いを尊重した看護が展開されています。本書では、このような施設に初めて入職した新任期看護師の「高齢者看護の実践能力」の修得を、施設の教育支援者がどのように支援していくかを解説しています。その内容は病院でも在宅でも活用できる、まさに「高齢者看護のエッセンス」です。「高齢者の看護」に取り組むためには、まず、どのような視点が必要なのかを理解するために、ぜひご活用ください。

 

 

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【編集部オススメBOOKs】vol.37 地域で病いとともに生きる人を支えるために

               

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特別寄稿 特養あずみの里裁判② 弁護側証人の鑑定と意見

長野県にある「特別養護老人ホームあずみの里」で、提供されたおやつを食べた女性入所者が意識を失っているところを発見されました。女性は救急搬送され、意識が戻らないまま病院で亡くなりました。この出来事は、現在、刑事事件として訴追されています。2018年11月号に掲載した「事件の概要と裁判の経過」に続き、本稿では、第19回公判に弁護側証人として出廷した川嶋みどりさんに、その内容の報告と看護師としての立場からのご意見をいただきます。

 

 

弁護側証人として

 

2018年7月2日、私は「特養あずみの里業務上過失致死事件裁判(以下、特養あずみの里裁判)」の弁護側証人として、第19回公判に出廷し、証言台に立ちました。特養あずみの里裁判では、それまで証人尋問や被告人尋問が行われてきましたが、今回の公判をもって証拠調べの段階が終了することになっていました。

 

特養あずみの里裁判は当初から看護職・介護職の注目を集め、無罪を勝ち取るために多くの支援がなされてきました。それはこの裁判が不当なものであり、その判決には日本の看護・介護の未来と高齢者の尊厳がかかっている、と誰もが感じたからではないでしょうか。

 

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訪問看護ステーションの経営戦略(12)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

 

 

利用者未収金の

特徴と管理方法

渡邉 尚之

 

 

訪問看護ステーションの医療保険・介護保険サービスの提供における未収金は、大きく2種類に分けられます。1つは前号で取り上げた国民健康保険団体連合会(以下:国保連)等への請求に関するもの、もう1つは個々の利用者が直接支払う利用者自己負担金に関するもの(以下:利用者未収金)です。今回は、後者について解説します。なお、保険外サービスに基づく利用者未収金については、各ステーションの契約等により状況が異なるため、本稿では取り上げません。

 

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