CC2013年9月号掲載【地域・病院・施設の多職種で同じメロディ奏でるオーケストラ連携】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.26〉
【地域・病院・施設の多職種で

同じメロディ奏でるオーケストラ連携】

英国ホスピスの地域看取りケアサポート

 

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ヨークシャーのホスピスの医師控室。近隣病院から訪問診療に来て、熱心に記録中

 

文と写真・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)

超高齢者3人の遠距離在宅ケア右往左往中。ケアマネ、訪問看護・介護・診療・薬局が頼もしい。ショートステイは、前日に本人の「行きたくない」の一言でキャンセル。申し訳ないです! mkimiko@mbf.nifty.com

 英国の看取りケアをリードするのは、何といってもホスピス。前回(2013年7月号)の「エンドオブライフケア・ストラテジー(終末期ケア戦略)」もホスピスの知恵のたまものでした。今回は、英国のホスピスが“地域看取りケア”をがっちりサポートしている様子を、ご紹介しましょう。日本にもよさそうなヒントも見つかりそうです。
※‌2008年に行われたロンドンホスピス研修(企画:ホスピスケア研究会・季羽倭文子顧問)を軸に、2006〜2012年に行った取材を加えて作成しました。

 

英国でのホスピスはどう育ったか

 

ホスピスの発祥はフランスで6世紀ごろと言われ、英国では約150年前の19世紀から。
●19世紀
当時、貧しい人々は家もなく、路上や公園で息を引き取るという悲惨な状態でした。これに心を痛めたメアリー・エイケンヘッドがホスピスをつくる志を立て、彼女の死後に実現されたのです。
当時のホスピスは貧しい人々のために無料でした。建物も費用も教会(後にチャリティ団体)が賄い、政府の援助には頼らなかったのです。この志は今も受け継がれています。
●20世紀
現代ホスピスの創設者と言われるシシリー・ソンダースが活躍を始めたのは1960年代。彼女は大学で政治哲学や経済を学んだ後に、念願の看護師になりました。
しかし、健康上の理由で看護を断念。その後ソーシャルワーカーを経て医師となって、がん終末期の痛みのコントロールを研究し、全人的な痛みのケアを開発したのです。
1970年代になると、ホスピスケアは病棟だけでなく、デイケアやホームケアなど、施設の外へ地域へと活動を広げていきました。
●そして現在
英国の一般の人は、ホスピスについて“死にゆく場”という不安を伴うイメージより、“最期まで温かく見守ってくれる場”という安心感を持って受け止めているそうです。
人口6200万人の英国で、ホスピスは約250カ所・約3400床にのぼります(日本のホスピス・緩和ケア病棟は、人口1億2000万人に対して、約220カ所・約5100床)。英国ではさらに、入院以上に、在宅ホスピスケアへのサポートが広がっています。地域緩和ケアサービス(次項参照)を行う施設が約460カ所、デイホスピスが約260カ所、病院での看取りを支援するホスピスチームが約370カ所あります(2008年当時)。
英国のホスピスケアは、在宅でも病院でも“患者さんが過ごしている場所”で看取りをサポートし、ホスピス病棟への入院は必要時だけに限定しているのです。

 

ホスピスが地域看取りをバックアップ

 

また、英国ではホスピスの運営自体が、地域と密接につながっています。
●医療部門は病院との連携で
ホスピスに不可欠な医療部門(医師・薬剤師・臨床検査技師・作業療法士・理学療法士など)は、近隣の病院で働く専門家が行います。その専門家が病院からホスピスに訪問したり(写真1)、患者さんが外来に通院するのです。
このように、地域の医療機器や人材を活用する方法により、ホスピスは看護・介護職員と調理・環境整備のスタッフなどだけで運営しています。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2013年9月号)