訪問看護ステーションや高齢者ケア施設で
生じやすい人事労務に関するトラブルと対応策、
またトラブルの防止策について解説いただきます。
スタッフがメンタルヘルス不調になった際の対応①
復職・退職までの流れと現状把握
中山 伸雄
なかやま のぶお
社会保険労務士法人Nice-One 代表 / 社会保険労務士
メンタルヘルス不調者数の増加
精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年、大幅に増加しており、厚生労働省の調査によると2002(平成14)年は約258万人でしたが、2017(平成29)年では400万人を超えています(図1)1)。
筆者は、社会保険労務士として企業の社会保険の給付手続きの代行業務を担っており、メンタルヘルス不調が原因による健康保険の傷病手当金の支給申請数や相談数の多さに、困惑すら感じています。それは、医療・介護事業所も例外ではなく、メンタルヘルス不調者に関する相談は日常になってきました。
メンタルヘルスが不調になると、「遅刻しがち」「欠勤が増えた」「おかしな行動をする」など、業務にさまざまな影響が出てきます。もちろん事業所は貴重な人材を失いたくないでしょう。しかし、期待されるパフォーマンスを出せないとなると、不本意とはいえ事業所は対応を考えなければなりません。かといって、日本の労働法制においては、良くも悪くも解雇規制が厳しく安易な対応は禁物です。職場復帰をめざして復職支援をするのは事業所の責務ですが、人がかかわる問題である以上、いつ、何が原因で労使トラブルに発展するかわかりません。職員はもちろん、事業所を守るためにも、場面ごとに慎重な対応が求められます。
そこで今回から数回にわたって、メンタルヘルス不調者への対応について紹介します。
ケースバイケースで対応する
メンタルヘルス不調者への対応は、職員本人の特性や症状、その家族状況がさまざまであることから、「こうすればよい」という確実な方法はありません。筆者は事業所から相談を受けた際、まず、それについて伝えた上で、「方針はどうしますか?」とうかがいます。