NT2013年12月号の【チームづくりのお悩み相談】のお悩みは、
「新人看護師の提案や意見を受け止めようとしない先輩看護師がいます」
事例 ▶ 新人看護師に「ナースコールを減らすために何ができるか」を主体的に考えさせる病棟学習会の場で、新人から提案が出るたびに「それはどうかな」「別の見方があるよね」と、否定しないまでも意見を受け止めない先輩看護師が多く、新人の表情は曇りがちで意見も減っていきます。これでは学習会の目的が果たされないと危機感を覚えますが、どうすることもできずにいます。
新人看護師研修におけるチームに限らず、チームの目的には、①効率よく目標を達成する、②活動を通してメンバーが学習する、③個々を育てる職場文化をつくる、の3つがあります。
以下に、今回の事例においてこの3つの目的すべてをクリアすることができるお悩み克服のヒントをいくつか取り上げたいと思います。
マッチャーとミスマッチャー
人の話を聞く時に、無意識に自分の考えとの共通点を見つけながら聞くタイプと、自分の考えと異なる点を見つけながら聞くタイプがあることが知られています。前者を「マッチャー」と呼び、後者を「ミスマッチャー」と呼びます。
例えば「ナースコールを減らすために何ができるかをテーマに、新人に看護について考えてもらおうと思うのですが」という提案に対し、マッチャーは「ナースコールを減らすことは大切ですよね」といった返答で場を盛り上げます。一方、ミスマッチャーは「ナースコールを減らすことも大切ですが、ほかにも大切なことはありますよね」と、なんとなくその場の雰囲気をギクシャクさせます。
事例の先輩看護師はミスマッチャーのようですね。つまり、提案の内容のよしあしに対して「それはどうかな」「別の見方があるよね」と言っているのではなく、この先輩の癖なのです。そこを理解して周囲が「気にしない」と思えたら問題はなくなります。
一方で、メンバーが深く考えずに何かを決めようとしている時には、ミスマッチャーの発言は「そうかな」と立ち止まってもっと考える機会をチームにつくり出します。複雑なテーマについて多角的な意見を求めたい時には、ミスマッチャーは無意識ですが、大いに活躍することも覚えておきましょう。
リフレーミングの重要性
リフレーミング(reframing)とは、ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事をその枠組みを外して異なる枠組みで再度眺めて見ることを言います。ミスマッチャーはこのリフレーミングを働きかける才能があります。
写真1は、コップにお茶が「半分ある」とも「半分しかない」とも取れます。どちらも間違いのない状況の捉え方ですが、「半分ある」との捉え方をすると「飲める」と行動がスタートしやすくなるのに対し、「半分しかない」と捉えると「飲んでよい?」と行動は弱化します。前進にはポジティブに捉えることが大切です。一方で、「多い・少ない」という思考のフレームから「ある・なし」というフレームに変換して眺めると、どちらも「ある」になります。
同様に、ナースコールに関してもフレームを変えるとナースコールを押す患者の捉え方がずいぶん変化してきます(表1)。「状況把握」「意思表出」「押せる?」の3つのフレームから見ると、患者のコールはありがたいものに見えてきます。
ミスマッチャーに対しても「場づくり」の切り口で眺めるとマイナスですが、「多角的な思考」の切り口で捉えると有用となります(続く)。
[著者]永井 則子(有限会社ビジネスブレーン代表取締役)
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