「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」をベースとした人間関係「見える化」シートによる分析やアプローチ方法、カンファレンスの進め方について解説します。
突然持ち込まれた相談
渡辺 裕子
はじめに
本連載では、利用者ご本人やご家族、あるいは周囲のスタッフとのかかわりに悩んだときに、その困難な状況をどのように理解したらよいのか、必要となる視点についてお話しします。
今回は私が経験したある事例をご紹介します。そして次回は、その事例のその後の展開と、事例の持つ意味について「リフレーミング」「物語としての理解」という視点から掘り下げてみたいと思います。
なお、ご紹介する事例は、いくつかのエピソードをつなぎ合わせたフィクションであることを申し添えます。
駆け出し保健師のころに
もう、かれこれ37年も前のことです。学校を卒業した私は、保健師がそれまでの10年間、未設置だった農村地帯のある町に就職しました。保健師としてばかりか、社会人としても何の経験もない未熟な私を、温かく受け入れてくださった町の方々。「待望の保健師(婦)さんが来た!」という人々の期待に応えなければと当時の私は、毎日とても張り切っていました。
あれは確か保健師になって2年目か3年目だったと思います。町の要職にある50代のBさんから、ある相談がありました。それは、「町内に住む1人暮らしの遠縁のおばさんをなんとかしてほしい」というものでした。このおばさん、70歳代後半のAさんは、Bさんの今は亡き祖父の異母兄弟の連れ合いとのこと。すぐには状況がのみ込めずにいた私にBさんは、「つまり、おらいのひいじいさんがおめかけさんに産ませた息子の、その嫁さんってわけ」と説明してくれました。
Aさんは、長らく介護していた義母と夫を10年ほど前に亡くしました。子どもがいなかったAさんは、小さな畑で自分が食べる程度の野菜をつくりながら1人暮らしを続けていました。もともとAさんも亡くなった夫も、周囲との付き合いを好まず、昔から地域では「変わり者」としてとおっていたようです。本家の長男であるBさんは、年々年老いていくAさんの暮らしを気にかけ、それとなく見守っていました。
→続きは本誌で(コミュニティケア2019年5月号)