本連載では、聖路加国際大学名誉教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。
失望と希望
文:井部俊子
2年間の往復書簡が終結に近づいています。私の番はこれが最後だと担当編集者の村山みのりさんが告げてきました。
前回の書簡にあった2床の有床診療所「小さな宿泊所」は繁盛していますか。地域包括ケアシステムづくりに貢献しようというあなたの意気込みが伝わってきます。素晴らしいです。
あなたが乃木坂スクールの講義をした際、地方自治体の職員から、その地域の訪問看護師は「ケアマネジャーの立てたプランどおり訪問し、医師の指示どおり医療処置をすることが自分の役割だと思っている人しかいない。どうしたら訪問看護師に地域包括ケアシステム構築に力を貸してもらえるか」という質問があったと記していました。指示待ち、指示受けに慣らされている看護職の仕事振りが感じられてがっかりした反面、訪問看護師に地域包括ケアシステム構築の中核になってもらいたいと期待する職員がいる地方自治体に希望をみました。
私もこのところ続けて“看護の危機”を憂える原稿を週刊医学界新聞の連載「看護のアジェンダ」に書いています。私の周辺で、入院体験をした人や家族を入院(入所)させた経験を持つ人たちが異口同音に看護師と看護サービスの劣化を指摘するからです。自称“看護責任者”の私にとって、それらの情報は私を暗澹たる気持ちにさせるに充分なものでした。こうした状況は何を意味しているのか、私は以下の5点を挙げました(第149回「本当の看護を求めて」、2017年5月)。『コミュニティケア』の読者にも伝えたいので、その内容を要約して書くことにします。
1つ目は、(誤解を恐れずに言うと)臨床看護師のウデが落ちているということです。