地域ケアの今⑨ 

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1606鳥海様

団塊の世代として介護予防を考える

文:鳥海房枝

 

 

町から姿を消した高齢者

 

地方都市の空港や主要駅に降り立ち、車で少し街中に入っていくと通所介護サービスの送迎車に必ず出会います。そして、威風堂々とした立派なものから普通の民家風のものまで、高齢者を対象にした事業を行う建物が、幹線道路沿いや細い路地に面して建っているのを数多く目にします。それと反比例するように、シルバーカーを押して道路脇を歩く高齢者や、道端などになんとなく集まった風情で話をしている高齢者たちを見かけることは極めてまれになりました。

 

これらのことから、いかに介護保険がわが国の隅々にまで行き渡り、それを利用している人々の数が膨大であるかを容易に想像できる一方で、「介護」が一大産業になっていることを強く感じます。口の悪い私の友人は、「年をとって少し体が弱った高齢者を、底引き網でかき集めて通所介護サービスに誘導している」と言います。

 

「定員を埋めるために“利用者”を欲しがる事業者と、サービスに高齢者を委ねたい家族の思いが合致して、さまざまな入所施設が増えている」。これはある社会福祉法人の理事長の言葉です。この言葉の言わんとしているところは、高齢者本人の気持ちはどうなのかにあると思います。

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年6月号)