ブックレビュー 地域包括ケアシステムと看護の役割がわかる! 『平成26年版 看護白書』

看護白書平成26年版

 

 『平成26年版 看護白書』のテーマは「地域包括ケアシステムと看護 ケアシステム構築に向けて看護職が担う役割と価値」です。団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて構築が急がれる地域包括ケアシステムについて、多角的な解説とともに、施設形態別の事例を紹介し、看護管理者への示唆に富む内容となっています。以下に本書の概要を紹介します。

 

 

 

 

地域包括ケアシステム構築の背景と必要性を示す「序論〜総論」

 

【序論】
「地域包括ケアシステムとは何か」について島崎謙治氏(政策研究大学院大学教授)が、「地域包括ケアの沿革」や「地域包括ケアと医療介護総合確保推進法」「地域包括ケアの本質のとらえ方」「地域包括ケアにおける連携の重要性」「連携の難しさと看護職の役割」「地域包括ケアをめぐる政策課題」の6つの視点でわかりやすく解説しています。2014年12月号p.68-72の「“地域包括ケア”の定着に向けて看護職に期待すること」について島崎氏に
うかがったインタビュー記事も併せてご覧ください。

 

【総論Ⅰ】
「地域包括ケアシステムと平成26年度診療報酬改定および医療介護総合確保推進法」について、野島康一氏(日本看護協会前参与)が、医療・介護関連の法律・制度の改正・創設や診療報酬改定について解説し、病院完結から地域完結に向かう道筋の一端を示して、その道程で強化が求められる看護の機能についても触れています。

 

【総論Ⅱ―1】
「看護がリードする病床機能分化と地域包括ケアシステム 病床機能分化において重視される看護の機能と在宅復帰率導入が意味すること」について福井トシ子日本看護協会常任理事が、平成26年度診療報酬改定の特徴を解説。改定の基本方針とともに、看護関連の改定項目を取り上げ、2025年を見据えた医療機能の分化などについて図を使ってわかりやすく説明しています。
さらに、「亜急性期・回復期を担う看護の役割」や「高度急性期の機能分化によって何が変わるのか」「在宅復帰率導入の持つ意味」等を述べ、看護職が在宅に向けてどのような体制を整えればよいのかを考え、連携や関係づくりに取り組むことが期待されると結んでいます。

 

【総論Ⅱ―2】
「看護がリードする病床機能分化と地域包括ケアシステム 在宅療養の継続とサービス調整」について、齋藤訓子日本看護協会常任理事が「機能強化型訪問看護ステーションの役割と機能」「長期的な在宅療養継続への支援」の2つのポイントから、診療報酬改定や介護保険法改正により創設されたサービスのことや、看護における連携の重要性を述べ、日本看護協会がめざす医療・介護の提供体制を示唆しています。

 

【総論Ⅲ】
「地域包括ケアシステム構築に向けた行政保健師の役割」について、中板育美日本看護協会常任理事が、少子高齢社会と人口減社会の到来や社会保障制度の持続可能性への危機など地域包括ケアシステムをめぐる背景や、保健師の重要な役割と期待などを解説しています。

地域包括ケアシステムの実際を
現場の取り組みから報告「各論Ⅰ 事例」

 

【各論Ⅰ】
1‐1事例 急性期病院
市立札幌病院が「PDCAサイクルを回しながら取り組む退院支援・地域連携」について、看護部委員会活動を主軸とした組織的な退院支援の取り組みを報告し、退院支援・退院調整プロセスの構築や実践について詳細に解説しています。
病棟と外来間の連携や退院支援アセスメントシートの記載内容の評価、訪問看護同行研修、退院支援実践報告会、退院支援の満足度評価など、急性期病院が在宅につなぐためのヒントが豊富に提示されています。
1‐2事例 急性期病院
さいたま赤十字病院が「訪問看護ステーション研修の導入」について報告しています。概要は2014年12月号「特集1」p.51-54に掲載しています。詳細については『白書』をお読みください。
1‐3事例 急性期病院
大和高田市立病院は「在宅療養指導とメディカルショートステイ」を紹介しています。在宅療養指導や退院指導を充実させるために、各在宅療養指導マニュアル等の指導内容を標準化し、受け持ち看護師が入院時から在宅移行に向けて主体的に指導にかかわるよう構築されたシステムの具体的な流れや指導方法の内容について解説。さらに、かかりつけ医からの依頼による短期間の入院で、在宅では困難な検査やケア、家族のレスパイトを提供するメディカルショートステイについて、開始した背景や運用の実際を報告しています。
1-4事例 急性期病院
愛媛大学医学部附属病院は「総合診療サポートセンターの活動と地域連携」として、入院前から退院後の生活を見据えた生活支援をめざす同サポートセンターの活動の実際や、地域連携における人事交流や地域の看護職の教育などについて解説しています。
2事例 機能強化型訪問看護ステーション
開設以来、訪問看護ステーションの多機能化に取り組んできたことが、機能強化型につながったという佐賀県看護協会訪問看護ステーションは「地域連携の拠点として」の訪問看護ステーションの取り組みを報告しています。
3事例 複合型サービス事業所
ホームホスピス「たんがくの家」が母体となって、全国に先駆けて開設された複合型サービス上村座が「複合型サービス事業所開設の背景や実際、課題」について解説しています。
4事例 特別養護老人ホーム
滋賀県済生会地域ケアセンターが「法人の強みを活かした地域連携強化」について、滋賀県済生会が運営する特別養護老人ホーム淡海荘の取り組みを中心に、同法人内の病院・訪問看護ステーション・介護老人保健施設などの連携強化について報告しています。
5事例 地域包括支援センター
豊橋市福祉部長寿介護課が「地域包括支援センターを主管する部門保健師の役割と実践」について、主管する部門とセンターの概要や保健師の活動を紹介しています。

 

行政が進める地域包括ケアシステムを解説「各論Ⅱ 事例」

 

【各論Ⅱ】
1地域連携から地域包括ケアシステムへ
南砺市民病院は、多職種連携で提供している1次・2次救急、急性期、回復期リハビリ、在宅・終末期医療・ケアなどの医療サービスについて報告し、さらに同院と南砺市地域包括医療・ケア局が試みている南砺市型地域包括医療・ケアシステムの構築について解説しています。医師の立場からみた看護職への期待も述べられています。
2地域包括ケアシステムの推進と地域づくり
静岡県における地域づくりの背景や健康課題を踏まえた健康づくりの取り組み、地域包括ケアシステムを円滑に進めるために看護職に求められることなどについて報告しています。

 

 

『平成26年版 看護白書』は、地域包括ケアシステム構築と看護の役割に関する非常に充実した解説書となっています。皆さまが所属する地域・施設の特性に合った地域包括ケアシステム構築に向けて、ぜひ本書を参考にしてください。

 

 

 

-「看護」2014年12月号「ブックレビュー」より –

 

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