NT2013年2月号連載【新★看護学事典】紹介      プレパレーション

NT2013年2月号の連載「楽しく読んじゃう 新★看護学事典」では、看護学事典第2で「プレパレーション」の解説を執筆してくださった伊藤久美先生(昭和大学藤が丘リハビリテーション病院)からエッセイをおよせいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

子どもに教わる日々

プレパレーションは「心理的混乱からくる悪影響を軽減し、子ども自ら意思決定ができる状況に導くためのもの」です。プレパレーションが「単に予め説明することではない」と重々承知した上で、その意義を実感したエピソードをご紹介します。

プレパレーションは、その時々で必要に応じて行われています。その中で、入院が長期になり繰り返し様々なプレパレーションを受けているうちに、“お話ないなら私やらない”と言う3歳児が現れました。

 

彼女は1歳半の時に小児がんで入院し、母親と医療者は当初から本人がわかる言葉やおもちゃを使って説明していました。そのため、1歳半でもそれなりに状況を理解できていたようでした。2歳半で再発をした時、母親から「子どもにまた入院して治療をしなくてはいけないことを看護師さんから話してほしい」と言われ、私は今まで通り彼女が日頃使っている言葉で話してみました。すると「うん、うん、バイキンさんがまたここ(お腹を指して)に入ったって、またやっつけるお薬するからお泊りだってママが言ってた」と話してくれました。

 

入院後、以前のプレパレーションはあまり記憶にないかもしれないと思い、年齢に合わせて、もう少し具体的に行いました。しかし、彼女は以前に話されたことは、ほとんど覚えていました。

 

そうしているうちに、彼女はわからないことがあれば、医療者に説明を求め、徐々に入院生活を自分でコントロールするようになっていきました。

 

服薬の時は「このお薬は何? お話聞いてないから飲まないよ!」。処置室に行く時も「痛くないように看護師さん4人で連れてって。ママはここ(処置室)にいてもいいけど、足(の処置)は○○先生と看護師さんだけ」。医療者と両親の話し合いに至っては「私は聞かなくていいの? 私のこと話すんでしょ?」と、亡くなるその日まで、自分の思う通りの生活をしようとしていました。

 

何歳であっても、その子どもに合わせたお話(プレパレーションを含め)が常にできるような環境があれば、子どもは自分の力で生活をコントロールしていくのだということを、彼女は身をもって教えてくれました。何十年と小児看護に携わっていますが、まだまだ子どもに教わる日々が続きます。

 

 

★プレパレーション

子どもや家族が理解できる説明や細やかな配慮を受けることによって心身の準備をし、先を見通すことができ、子ども自身が意思決定できる状況に導くこと(看護学事典第2版より)。

 

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