POTTスキルで解決〜食事ケアの困りごと 看護で食べるよろこびを

 

 

誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。

 

執筆

迫田 綾子 さこだ あやこ

日本赤十字看護大学名誉教授

POTT プロジェクト代表

 


知りたいこと その❸

 

食欲はあるのに、姿勢がどんどん前屈みになって
食べられません……

食事姿勢をアセスメントして、快適な食事へ

 

 

F.ナイチンゲールは「看護師のまさに基本は、患者が何を感じているかを、患者に辛い思いをさせて言わせることなく、患者の表情に現われるあらゆる変化から読みとることができることなのである」と述べています1)。

 

食事姿勢も同様です。適切な状態かどうかを患者や利用者自身で判断することは難しいため、看護師の知識や経験が非常に重要となります。看護師は利用者が安楽に食事ができるようになるにはどうすればいいのかをイメージしながら観察し、姿勢が崩れたときなどにはまず、安全を確保します。また、呼吸苦や誤嚥、窒息の可能性を踏まえてバイタルサインや口腔内の観察を行い、異常が見られた場合は食事を中止して緊急対応します。

 

姿勢が崩れる要因とリスク

 

姿勢が崩れる理由として身体変形、麻痺や筋緊張などがあり、崩れた場合に自分で元に戻せないことが不良姿勢の要因にもなります。

 

不良姿勢は食欲低下、誤嚥、窒息、消化不良、ストレス、疲労、褥瘡などのリスクにつながり、健康やQOLに大きな影響を及ぼします。そこで、利用者に対してまず食事姿勢のアセスメントを行い、安全で安楽なポジショニングを提供することにより、快適な食事につなげます。

 

食事姿勢の観察(アセスメント)

 

食事姿勢の観察には、筆者らが根拠と実践に基づいて開発した「POTT食事姿勢評価表」を用います2)(図表1)。この評価表の特徴は、個別の姿勢特性やポジショニング実施前後の変化が可視化され、優先課題を明らかにできることです。10項目について、3点:適切(よい)、2点:ほぼ適切(ほぼよい)、1点:やや不適切(やや悪い)、0点:不適切(悪い)で評価し、目標となる合計点数は30点です。ポジショニングスキルを理解しているとより正確な評価ができ、多職種とともに評価を行えば客観性も高くなります。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2025年6月号)