NT2014年2月号連載【退院支援の仕組みづくりと実践事例】紹介

NT1402表紙

 

ナースたちが退院支援の仕組みをつくり、うまくいっている病院の実践事例を1つ取り上げ、「意思決定支援」と「自律支援」を軸に病棟ナースと在宅ナースがそれぞれの実践を振り返ります。加えて管理者から仕組みづくりの経緯とその内容をうかがいます。

 

 

 

 

 

 

[監修]宇都宮 宏子

(在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)

[筆 者]秋葉 博子(退院調整看護師)

福田 ひとみ(入退院・医療連携センター 主任看護師)

木戸 恵子(訪問看護師)

山岸 清美(看護管理師長)

 

今月の病院  東京慈恵会医科大学葛飾医療センター  

 

事例紹介

 

Dさん(63歳/男性)

 

Dさんは、妻と息子の三人暮らし。2012年10月に受けた人間ドックで胸部異常陰影の指摘を受け、当院での気管支鏡検査において肺がんの診断を受けた。2013年1月手術施行後、3月より化学療法を開始。治療後3週間が経過したところで、排尿障害がみられるようになると同時に両下肢が動かなくなり、ベッド上での臥床生活を強いられることとなった。放射線療法を行ったが、骨転移・脊椎浸潤の増悪が認められ痛みを伴うようになっていった。

 

病状は日々悪化してきている状況で、3クール目の治療を行う目的での入院の際に「最期は自宅で過ごしたい。病院で死ぬのは嫌だ」というDさんの意思を確認したため、その思いに添って在宅療養への調整を行い自宅退院となった。

退院後、病状はますます悪化傾向にあり、家族の戸惑いも大きかったが、在宅療養支援スタッフの介入を受け、家族とともに自宅で過ごす時間を持つことができた。少しでも長く一緒にいたいという思いもあっただろうが、苦痛を我慢しながらの日々はお互いにつらいため、緩和ケアに徹するという選択となった。

 

「とにかく苦痛だけは少ないようにしてあげたい」という妻の思いを貫き、「最期は自宅で」という患者の思いに添うことができた。Dさん本人も妻も、お互いを思いやる気持ちを抱きながらの療養生活であった。(続く)

 

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