CC2013年7月号掲載【ホスピスの知恵を生かして地域・病院・施設の看取りの質向上】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.25〉

【ホスピスの知恵を生かして地域・病院・施設の看取りの質向上】

英国の「エンドオブライフケア・ストラテジー(終末期ケア戦略)」

 

 

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写真1

「エンドオブライフケア・ストラテジー(終末期ケア戦略)」は160ページ以上もある充実の内容

 

 

文と写真・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)

超高齢者3人の遠距離在宅ケアを初体験中。ケアマネジャー、訪問看護や介護、訪問診療、小規模多機能型居宅介護、シルバー人材センター、デイサービスの助けを得つつ右往左往中。

ご感想は mkimiko@mbf.nifty.com まで。

 

 

在宅での看取りが求められています。でも家族介護力は弱まるばかり。新たな看取りの知恵の開発が必要でしょう。そこで、ホスピスの知恵を在宅・病院・施設に応用して、看取りの質向上を! と取り組む英国の「エンドオブライフケア・ストラテジー(終末期ケア戦略)」が参考になりそうです。英国各地のホスピスや地域保健センターでの取材を基にご紹介します。
※‌2011年11月号62ページ「ロンドン北部地域の看取り支援ネットワーク」の記事も併せてご参照ください。

 

どこでも、どんな病気の看取りでも

 

英国で全国的に取り組まれている「エンドオブライフケア・ストラテジー」(写真1)。ごく簡単に説明すると、以下のようになります。

  • 人生の最期に、自宅・病院・施設どこでも、ホスピスのような質の高いケア提供をめざす
  • がんだけでなく、生命を脅かす病気すべてが対象(HIV/AIDS・心不全・呼吸不全・腎不全・脳梗塞・神経難病・運動ニューロン病など)

そして看取りケアの質を向上するために、次の4つを全国的に整備・推進しました。
①看取りの知恵を標準化した3つのツール
現場で使いやすい3種類の看取りケアツール「ケアについての本人の希望の事前確認」「リバプール看取りケアパスウェイ」「地域・在宅での看取りケアの枠組み」が用意されました(次項)。
②推進ファシリテーター
各地区に推進ファシリテーターが置かれ、病院や地域センターに入って、「リバプール看取りケアパスウェイ」や「地域・在宅での看取りケアの枠組み」に取り組む手助けをします。
③看取り関係者の再教育
医師や看護師など各専門家からボランティアまで、看取りケアの再教育が順次行われました。症状緩和や治療法などの知識・技術とともに、患者さんの心理面に配慮したコミュニケーショントレーニングも重視しています。
④地域ごとの緩和ケア支援ネットワークシステム
地域で看取りにかかわる家庭医・地域看護師チームや一般病院を、専門病院の緩和ケア専門家チーム、ホスピスなどがネットワークを組んで重層的にサポートします。

 

看取りケアの実際的な3つのツール

 

ホスピスでの看取りの知恵を基にシンプル化して3種類のツールにまとめました。在宅や病院や施設での看取りに活用されています。

 

●ケアについての本人の希望の事前確認
(The Preferred Priorities for Care)
患者さんと「最期の日々を、どこで(自宅・病院・ケアホーム・ホスピス)、誰と、どんなふうに過ごしたいか」を話し合い、その希望を書いておきます。定められた書式に記すことで救急隊に登録され、家族・主治医・ホスピス等もコピーを保管し、本人の希望がかなうのです。
話し合うタイミングが難しそうですが、病状が切羽詰まらないうち、余命が月単位になるころまでには話し合っておくことをすすめています。
救急隊は蘇生をして急性期病院に運ぶ責任があるので、蘇生術を希望しない人は、そのことを書いておかないと事が面倒になります。こういう事態を避けるために、救急隊と医療者が共同で書式を作成したのです。

 

●リバプール看取りケアパスウェイ

(Liverpool Care Pathway for the Dying Patient)
あと数日で死が見込まれる状態になった患者さんとご家族に、どんな場所でも、どんな病気でも質の高い看取りケアを提供するためのケアパスウェイです。看取りは“ナースがリードする仕事”と捉えられています。臨死期数日間(目安は48時間)のケアを定式化し、記録用紙も簡単に標準化したものです。
リバプール大学病院とマリーキュリーホスピスが主体となり、大学・臨床の多職種協働で作り上げたものを政府が採用しました。国際的にも普及し、日本語版*1も出ています。

 

●地域・在宅での看取りケアの枠組み
(The Gold Standards Framework)
自宅で人生最期のときを過ごそうとする患者・家族をサポートするためのツールです。
目標は、以下の5つ。

  1. 患者のつらい症状をコントロールする
  2. 患者が望む場で最期まで過ごせるようにする
  3. 安心して過ごせるように適切なサポート
  4. 世話する家族も支えられ、元気づけられる
  5. 医療介護職ともコミュニケーションがとれ、チームワークよく満足して活動できる 

→続きは本誌で

 

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*1‌ Liverpool Care Pathway(LCP)日本語版のページ
http://www.lcp.umin.jp/

 

→コミュニティケア2013年7月号