スペシャリストの実践知⑭

各分野のスペシャリストによる看護実践の過程から、困難事例への視点や日々の実践に役立つケア・コミュニケーションのポイント、スキルを学びます。

 

摂食嚥下

家族介護者の思いを尊重し、

継続できる介護をともに考える

 

今月のスペシャリスト:大川 智恵子

 

 

「あい訪問看護ステーション」は、「Art:確かな技術の提供」「Information:十分な情報提供」「Safety:その方の尊厳やその人らしさを守ります」「Trust:利用者の方との信頼関係を築けるように努めます」を理念に、24時間365日体制で訪問看護を提供しています。また、利用者の摂食嚥下機能の維持・向上をめざして、摂食嚥下障害看護認定看護師・言語聴覚士・管理栄養士等によるチームでケアを実践しています。2021年8月現在のスタッフ数は、看護職12人・理学療法士3人・作業療法士3人・言語聴覚士1人・事務職2人で計21人です。

 

在宅で支援する対象者は、利用者と、その介護者である家族です。そのため、訪問看護師には本人だけでなく家族の価値観や希望・思いを尊重し、その人の介護力を判断した上で、介護を継続できるよう支援することが求められます。

 

 

本稿では、誤嚥リスクのある妻に対して「口から食べさせてあげたい」と願う夫に困惑しながらも、段階を踏みながらその思いをかなえていくことで、妻の生活の質向上につながったケースを紹介します。

 

自分のスタイルで食事介助を行う夫

 

事例:Aさん/70代女性/要介護5

脳梗塞(右半身不全麻痺、運動性失語)・心不全・誤嚥性肺炎

 

Aさんは夫と2人暮らし。201X年に脳梗塞を発症して右半身不全麻痺・運動性失語を生じ、自宅療養をしていた。その数年後、心不全の悪化により入院し寝たきり状態となる。

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2021年11月号)