訪問看護ステーションの経営戦略(19)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

人件費率から
目標売上高を検討しよう

渡邉 尚之

 

 

訪問看護の費用の大半は人件費

 

厚生労働省によると、訪問看護ステーションの収入に対する給与費(給与・賞与・法定福利費等の合計、以下:人件費)の割合は73.1〜83.8%です(表1)1)。人件費率(%)は「人件費/売上高×100」の式で算出します。

 

訪問看護ステーションに限らず、経営では事業存続のために利益を確保することが大切です。利益(黒字)とは訪問看護収入等の収益から人件費等の費用を差し引いた結果がプラスの状態です(収益-費用>0)。逆に損失(赤字)とは、この結果がマイナスの状態です(収益-費用<0)。

 

 

上述のとおり、訪問看護ステーションは人件費率が80%前後と費用の大部分を占めます。そのため、人件費のコントロールが費用全体、ひいては利益獲得に大きな影響を与えます。人件費率が過大では利益の確保は困難で、事業の継続にも影響を及ぼしかねません。筆者の感覚では、人件費率が80%を超えると赤字となるステーションが多い印象です。もちろん、適正な人件費や人件費率は各ステーションの実情に合わせて検討すべきですが、赤字に苦しむステーションの多くは人件費率が85%以上に上るなど、人件費率の高騰が主な要因となっていることが少なくありません。

 

人件費率を抑えるには売上高の確保が必要

「収益-費用=利益」という関係式において、費用の大半を人件費が占めることから、利益獲得(黒字経営)の上で人件費率は大変重要な指標です。人件費率は「人件費/売上高×100」であることを踏まえると、これを抑制するには分母の売上高を増加させるか、分子の人件費を削減させるかしかありません。

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2019年9月号)