在宅ケアの現場でも、ICT(情報通信技術)という言葉を耳にする機会が多くなってきました。業務の効率化に活用できるとはいうものの、「ICTってよくわからない」「情報漏えいが不安」などと戸惑う方も少なくないと思われます。本書はそうした皆さまに向けて、訪問看護ステーションにおけるICT化の意義や活用方法をわかりやすく解説しました。ICT化への第一歩を踏み出すために、今すぐ使える知識が満載です。
■「訪問看護記録を手書きしている」
訪問看護ステーションは56.9%
訪問看護の現場では今、効率的な看護サービスの提供や多様なニーズへの対応、地域での情報共有が求められており、その方策の1つとしてICTの活用が注目されています。訪問看護ステーションのICT化は、主に訪問看護の業務支援システムの導入・活用を指します。具体的には、パソコンやタブレット、スマートフォンを活用して訪問先で看護記録を入力し、その情報を共有してデータ化・分析したりすることをいいます。
訪問看護分野のICT化は全体的に遅れているといわれます。全国訪問看護事業協会(以下:同協会)は2016年から訪問看護ステーションにおけるICT化の情報提供等を行ってきました。同協会の2018年調査によると、訪問看護記録を手書きしている事業所は56.9%。2年前の調査と比べ18.5%減少したとはいえ、日々の記録や報告書の多くが紙媒体でやりとりされているのが現状です。
ICT化は業務の効率化や看護の質の向上、地域での情報共有の面で多くのメリットがある一方、ICT機器の導入費用やセキュリティの不安などがネックとなり、導入に踏み切れない訪問看護ステーションが多いようです。本書はそうした方に向けて、同協会の取り組みを基に「訪問看護のICT化の全体像」をわかりやすく解説した入門書です。
■ICT化の全体像がわかる内容
まず、1章では同協会の2018年調査の結果を示し、訪問看護におけるICT化の現状を解説。2章では「訪問看護ステーションにおけるICT活用の3段階」(図表1)に沿って、それぞれの方法やメリットを示しています。
続く3章、4章は、早くからICT化に取り組んできた訪問看護ステーションの事例を多数掲載。費用の確保、業者の選択、セキュリティ対策、スタッフへの説明など、さまざまな局面にどう対応すべきか、実体験に基づいてアドバイスします。
4章には11社による訪問看護業務支援のシステムガイドも掲載しました。初心者の方向けにICTの基礎知識を解説した6章「用語集」と合わせて、ICT化を検討する訪問看護ステーションの方にとってすぐに使える情報が満載です。
そして、5章ではICT活用の第3段階「ICTを活用した経営分析」の方法として、同協会の「訪問看護ステーションの自己評価システム(Web版)」を紹介。自己評価によって運営状況を可視化し、対策を立てることが訪問看護の質の向上につながること、そのプロセスにICTが深くかかわっていることがわかります。
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「『ICT』は知識が乏しい領域のため、そもそも『よく分からない』ということが最大のハードルです」(訪問看護ステーション細江所長・尾田優美子氏。本書p.59より)
こうしたICT化へのハードルを乗り越え、ケアの質向上・業務の効率化・多職種連携に向けてICT化にチャレンジする皆さまに、本書をぜひ役立てていただきたいと思います。
わかる・できる・使える
訪問看護のためのICT
ケアの質向上/業務の効率化/多職種連携を実現する
一般社団法人
全国訪問看護事業協会 編
●B5判 140ページ
●定価(本体1900円+税)
ISBN 978-4-8180-2175-4
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)