POTTスキルで解決〜食事ケアの困りごと 看護で食べるよろこびを

 

 

誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。

 

執筆

迫田 綾子 さこだ あやこ

日本赤十字看護大学名誉教授

POTT プロジェクト代表

 


知りたいこと その❺

 

ベッドからずり落ちながら食べている人をよく見かけます。 ポジショニングはどうすればいいですか?

 

 

ある日、夕食時に利用者Aさんの部屋にうかがうと、Aさんはベッド上に横たわり、上体を左に傾けて柵を握っていました。右側マヒのため両手が使えず全介助の状態で、健側の左側から食事介助していると、Aさんが「食べる気にならん……」と一言。そこで筆者は、この場でできるポジショニングを考えました。足元にあった掛布団を丸く畳んで左肘下に置き、肩甲骨の下へ枕を入れてみると、Aさんはベッド柵から手を離し真っすぐ前を向いて自分で食事をし始め、「食べられるねー」とうれしそうに言ってくれました。

 

訪問看護の現場では、ベッド柵を握って姿勢のバランスを取っている利用者をよく見かけると思いますが、この状態では食欲や自力摂取に悪い影響を及ぼすことが少なくありません。そこで今回は、POTTプログラムにおけるベッド上の基本スキル*1を紹介します1-3)。

 

ベッド上でのポジショニング

 

病の回復過程にある人や、全身状態の悪化などにより座位姿勢での食事が困難な人を対象とします。利用者の目的を明確にして、食べる意欲や良好な機能を発揮できるよう努めます。ポイントは、安全・安楽で苦痛がないこと、飲み込みやすく誤嚥がない(減る)こと、食物の重力や摂食嚥下機能を活用して介助者が誰でもできること(再現性)です。

 

必要な準備

 

使用する物品は、大きめのクッション3個(両脇用2個、足底接地用1個もしくは2つ折りの座布団)、厚手のバスタオル2枚(足底接地用、頭頸部調整用、60度リクライニング位では1枚追加)、サイドテーブル1台、食事、口腔ケア用品などです。

 

短時間で効果的にポジショニングができるよう、手順を考えて物品を配置します(写真1)。ベッドの動きや角度を確認し、ベッドサイドにチームの手順や条件表などが掲示してあれば、体調に応じて、すべての介助者が同じ環境に整えることができます。

 

写真1▶︎準備する物品

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2025年8月号)