[認知症plus]シリーズ第8弾のテーマは「生活の継続」です。うん? なんのことだかわからない? いえいえ、それでは困ります。地域包括ケアが進む今、最も大切なのは、患者が「在宅→入院」「入院中」「退院→自宅あるいは施設」と“場”が移るときに、その「生活」が「継続」されることだからです。本書では、そのために必要なことを、認知症の人の“生活の場”である高齢者ケア施設に所属する認知症看護認定看護師たちが明らかにしてくれます。
■「高齢者ケア施設」の認知症看護認定看護師
高齢者ケア施設は、介護保険施設である特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設が有名ですが、そのほかにもグループホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・有料老人ホームなどさまざまな施設があります。そして病院のナースとは比べ物にならない少なさですが、高齢者ケア施設で働くナースも増えてきています。
一方、認知症高齢者も増えており、その対応に苦慮する急性期病院のナースの声が聞こえてきます。そんなナースに応えることができるのは、認知症看護の専門家・認知症看護認定看護師(DCN)です。認知症高齢者の“生活”に触れている高齢者ケア施設のDCNの看護実践には、「生活の継続」を実現する認知症ケアのヒントがいっぱい詰まっています。
■高齢者ケア施設における看護実践が病院ナースの
“気づき”を引き出す
本書では、高齢者ケア施設に所属する(かつて所属していた)DCN18人の詳細な看護実践報告が収載されています。
第1章「“終の住処”にもなる生活の場で認知症の人と共に」では5人の特別養護老人ホームDCN
第2章「さまざまな可能性を持つ“中間施設”での認知症ケア」では4人の老人保健施設DCN
第3章「医療に頼らないときから“その後”を見据えて寄り添う看護」では3人の有料老人ホームDCN
第4章「地域のあらゆる資源で可能な“認知症の人”への看護」ではグループホーム・看護小規模多機能型居宅介護・クリニック等の6人のDCN
ほとんどの報告に、詳細な「事例」があり、認知症高齢者の“生活”を具体的にイメージすることができます。そして、その事例にDCNがどのような看護を展開していったのかが詳細に語られます。
その実践を読むと、例えば
「認知症の人が“せん妄”を起こしやすい理由」
「薬を使わず、ケアでBPSDを抑える方法」
などがわかります。まさに、高齢者ケア施設のDCNたちの実践が、病院ナースの「なぜ?」に答えてくれるといえるでしょう。
最後の第5章「対談:“老いの医療化”に惑わされず、認知症の人の“本当の姿”を見つめてほしい」では、認知症看護の先駆者・中島紀惠子氏(新潟県立看護大学名誉教授)と太田喜久子氏(慶應義塾大学名誉教授)が、高齢者ケア施設のDCNから何を学ぶかを語り合います。この中に出てくる「老いの医療化」は、ぜひ病院のナースの皆さんに注目していただきたい、必見のキーワードです。
本書では、誌面見本にもあるように、「実践のポイント」「キーフレーズ」「Column病院にいた頃の自分に伝えたいこと」など、“知っておきたい認知症看護”が簡潔に整理されています。
時間のとれない方は、これらに目を通していただくだけでも、新たな“気づき”が得られます。その“気づき”は、きっと、あなたの“認知症看護”を変えてくれるに違いありません。
認知症plus生活の継続
認知症看護認定看護師の実践が明らかにする
認知症看護認定看護師「施設の会」 編
●B5判 220ページ
●定価(本体2800円+税)
ISBN 978-4-8180-2249-2
日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)
→看護2020年5月号より
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