福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。
コミュニティとは
文:上野まり
先日、ある研修会でワールド・カフェとやらに参加する機会がありました。数人の見知らぬ人たちと輪になって、1つのお題についてあれこれと思いを語り、時間になると次は別の人たちと輪になってまたそのお題について語り合い、最後は元いた輪に戻って再度、話し合うというユニークな座談会のようなものでした。このときのお題は「今後、地域の住民の暮らしを支えるために、どんなケアが求められているのか」。その中で、ある人が投げかけた1つの問いに考えさせられました。それは「そもそも自分にとってコミュニティとはなんだろう?」というものでした。
本誌のタイトルにもあり、地域看護や在宅看護、被災地支援などで頻繁に耳にする言葉ですが、あらためて考えたことがなかったため、その問いは私にとって妙に新鮮に響きました。そこで、今回は「コミュニティ」について考えてみようと思います。
多種多様なコミュニティ
辞書によるとコミュニティとは、「①人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。共同体。②インターネット上で、共通の関心をもちメッセージのやりとりを行う人々の集まり。③ アメリカの社会学者マッキーバー(R. M. MacIver)が定式化した社会類型の一。血縁・地縁など自然的結合により共同生活を営む社会集団。→ アソシエーション」(大辞林第三版,三省堂.)とあります。 なるほど、さまざまな意味を包含している言葉なのだと認識し直しました。
人が社会の中で生きていく上で、どの共同体にも属さないということは、ほぼあり得ないと思います。人は生まれた直後から「家族」という最小単位の血縁集団に属しています。たとえ生後すぐに産みの母や父と別れたとしても、なんらかの生活共同体に属さなければ、生きていくことはできないでしょう。
人が成長する過程においては、保育園や幼稚園、小・中学校、高等学校、大学や専修学校などに属し、その中でクラスやクラブ、アルバイト先といった複数の集団に属することになります。学校を卒業して仕事に就くと職場という共同体に属し、それ以外に同じ趣味を持つ仲間の集団などに入る人もいるでしょう。また“飲み仲間”や、子育て中の女性には“ママ友”、近所の主婦で集まる“お茶会”といった共同体もあるでしょう。その他、町内会・自治会活動の集まり、子供会、青年会、婦人会、消防団、老人会など、地縁に基づく集団もさまざまあります。これらはすべて「コミュニティ」と定義できます。