日本の医療の諸問題について、それぞれのエキスパート24人が哲学的・倫理的に思索しました。「医療の論点」を「倫理的に考える」意欲的な書です。
■幸福と正義を論じる24のテーマ 全紹介!
1. 「看護師にとって、倫理を考え教育するとはどういうことか?」に ついて、福山美季氏が論じます(看護師と倫理教育)。
2. 「ナラティブ・ベイスド・ナーシングの倫理的価値」を、金城隆展 氏が論じます(ナラティブと倫理)。
3. 「医療は人間の幸福にどれくらい寄与できるのだろうか?」につい て、尾藤誠司氏が論じます(医療介入と患者の幸福)。
4. 「医療専門職のプロであるとは、どういうことか?」について、大 生定義氏が論じます(プロフェッショナリズムと倫理)。
5. 「救急車の有料化案に至った患者の倫理観の変遷」を、大西基喜氏 が論じます(過剰な権利意識と公平の倫理観)。
6. 「女優アンジェリーナ・ジョリーの予防的乳腺切除」について、江 口惠子氏が論じます(遺伝性疾患と自己決定のプロセス)。
7. 「スマホのLINEを使って多職種間で業務上の申し送りややり取り をすることは、倫理的に問題はないのか?」について、久保田聰 美氏が論じます(ICT* 活用における倫理的課題)。
8. ツイッターで看護学生が解剖画像をアップし、退学となった事例を 元に、「医療者の倫理教育」について、前田樹海氏が論じます (医療者のメディアリテラシーと倫理教育)。
9. 「看護・介護の重労働業務を、ロボットで置換すること」につい て、岡本慎平氏が論じます(看護・介護の現場における人間とロ ボット)。
10. 「高齢出産希望者に対して出生前診断を行うことはよいことか? 染色体異常があった時の選択的中絶と、一般的な人工妊娠中絶 に違いはあるのか?」について、和田和子氏が論じます(選択 的中絶と障害者差別)。
11. 「海外で移植を受けなければ我が子は助からないが、我が子を救 うことは外国の子の生命を奪うことにつながりうる、という親 の気持ちや葛藤」を、藤田みさお氏が考察します(臓器移植と 二者択一)。
12. 「認知症高齢者が事故を起こした場合、誰が賠償責任を負うの か?」について、山崎祥光氏が弁護士の立場から論じます(被害 者の保護と家族負担の軽減)。
13. 「地震などの災害時に、日常の倫理観は通用するのか?」につい て、戸田聡一郎氏が論じます(災害時における正義)。
14. 「社会保障費増大で国民の負担増が避けられなくなる日本におい て、尊厳死、安楽死の議論をすること」の是非を、谷田憲俊氏が 明快に断じます(尊厳死、安楽死と生命倫理)。
15. 「貧富の格差が進む日本で、医療および医療制度のあり方はどう 変わるのか?」について、児玉聡氏が論じます(国民皆保険をめ ぐり、迫られる選択のとき)。
16. 「自宅で孤独死すること。施設で家族に看取られず死を迎えるこ と。どちらが幸福なのか?」を、會澤久仁子氏が論じます(孤独 死、施設、家族、幸福とは何か?)。
17. 「100歳の患者に大きな侵襲的手術をするのは、無駄な医療とい えるのか?」を、門岡康弘氏が論じます(医学的無益性と生命倫 理)。
18. 「今の病院組織の中で、事前指示書をどう扱ったらいいのか?」 について、服部俊子氏が論じます(事前指示書を尊重して扱うた めにできること)。
19. 「精神科患者への強制的な治療における倫理的問題」について、 大西香代子氏が論じます(倫理と基本的人権)。
20. 「HIV/AIDSの患者にどう接すればよいのか?」を、大北全俊氏 が論じます(日本の社会における差別・スティグマ)。
21. 「病院におけるルーチン化したお見送りは、倫理的に問題はない のか?」について、正木左希子氏が論じます(死亡退院時におけ る2つの問題提起)。
22. 「慢性疾患を抱える患者と家族が自分らしく生きていけるには、 どんな医療が必要か?」について、圓増文氏が論じます(医療者 の役割と支援)。
23. 「さまざまな局面で患者本人の意思と違う家族の意向をどう扱っ たらよいのか?」について、板井孝壱郎氏が論じます(患者本人 の幸福と家族の幸福)。
24. 「医療現場でのプラセボ使用で患者を欺くことは、場合によって は許されるのか?」について、三浦靖彦氏が論じます(プラセボ 使用の倫理的考察)。
-「看護」2016年4月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –
少子超高齢社会の「幸福」と「正義」
倫理的に考える「医療の論点」