改正労働施策総合推進法施行前に知っておく カスタマーハラスメントの基礎知識

 

改正労働施策総合推進法施行を前に、カスタマーハラスメントの実際や、病院にもたらす影響を確認し、具体的に病院が取り組むべきことを伝えます。


熊谷 雅美

康心会汐見台病院 看護部長

1981 年神奈川県立看護専門学校卒業後、済生会神奈川県病院に勤務。看護基礎教育や衛生行政などに従事し、この間、神奈川県立看護教育大学校看護教育学科、日本女子大学家政学部児童学科、横浜国立大学大学院教育研究科教育臨床修了(教育学修士)。2003 年から済生会神奈川県病院看護部長、06 年から済生会横浜市東部病院看護部長を歴任。この間、東京医療保健大大学院医療保健学研究科修了(看護マネジメント学修士)。17 年から日本看護協会常任理事を2 期務め、22 年湘南医療大学教授、23 年から現職。


最終回

カスタマーハラスメント対策

中小規模病院の現状を踏まえて

 

本稿では、中小規模病院はカスハラに対応するための資源が不足していることから、生じさせないことが最も重要であり、さらに外部組織活用も必要であることを説明する。また、規模の大小を問わず近年一番の問題となっているSNS によるカスハラへの対応についても述べる。

 

 

はじめに

 

2019年5月29日、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を企業に義務付ける労働施策総合推進法の改正案が17の附帯決議1)をもって可決され、同法が施行されました。17の附帯決議の一つが「顧客からのハラスメント防止」でした。

 

そしてこれが法律となり、2025年6月11日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」2)が公布されました。この改正により、2026年10月1日、カスタマーハラスメント(以下:カスハラ)や求職者等に対するセクシャルハラスメントの防止措置が事業主の義務と

なります。

 

「患者からの要求であっても、不当なものは不当」なのであり、筆者は、ようやく前を向いて「ノー!」と言えるようになったと安堵しています。

 

大規模病院におけるカスハラ

 

1.「仕方ない」から「許さない」へ

筆者は、2003年には400床、2007年には560床の高度急性期病院で看護部長を務め、救急外来において「今、診てくれ」「私が最初に来たから私から診ろ」など、いくら説明しても不当な要求をしてくる患者への対応に苦慮していました。どの病院においてもこのような状況が生じており、これに対応するため、さまざまさまざまなハラスメ

ント対策の講演会が開催されていました。当時のカスハラ対策としては、デパートの対応策が紹介され、「ひたすら話を聞く」「カスタマーより目線を上げない」などが主でした。しかしそれで解決することはなく、何度も繰り返され、診療が妨げられ、職員(医師・看護師等)が疲弊してしまっていました。

 

→続きは本誌で(看護2026年6月号)