能登半島の災害から学ぶべきこと(企画協力:酒井明子)

 

第9回

「先取り適応」で災害復興に備える

災害を契機とした地域の再構築

 

加藤 孝明

東京大学生産技術研究所 教授・社会科学

研究所 特任教授

1967年愛知県生まれ。東京大学工学部市工学科卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了。博士(工学)。

同大学工学部附属総合試験所助手、同大学大学院工学系研究科

都市工学専攻助手、助教、同大学生産技術研究所准教授を経て

現職。災害シミュレーション技術・まちづくり支援技術の開発を

行うほか、「防災【も】まちづくり」を提唱し、総合的な地域づく

りの新しいモデルを実践的に模索する。都市計画学会計画設計賞

(2022)他、受賞多数。

 


はじめに

本稿では、まず復興の6法則を提示し、復興の普遍的特性を述べた上で、災害復興の方針の多様性に触れます。続いて、復興できない状況 を避けるために不可欠な復興の事前準備について述べ、地域の将来像を描く「先取り適応型復興」を具体例とともに論じます。

 

復興の6法則
世界および日本の復興事例をレビューすると、共通する以下の6つの法則的特徴が浮かび上がります。これらの法則は今後の災害復興にも当てはまると考えられます。

 

 

法則1.どこにでも通用する処方箋は存在しない

時代、災害特性、地域特性が異なれば、処方箋も異なります。特に重要なのは時代です。大規模災害は頻繁に起こるものではないため、既 存の復興政策は、前の時代に使われたものであり、常に一定程度は「陳腐化している」ものと捉える必要があります。平時のうちに復興政策をアップデートしておくという視点が重要です。

 

法則2.災害復興は社会のトレンドを加速する

2004年の新潟県中越地震の中山間地や2011年の東日本大震災の三陸地方、2024年の能登半島地震の能登地方では過疎化が加速しまし た。一方で、2008年の四川大地震後では「3年間の復興で未来の10 年分の成長を先取りできた」と言われるように、成長過程にあった地域 の成長が加速しました。復興では、よいトレンド(動向)と悪いトレンドを峻別し、悪いトレンドは抑制しつつ、よいトレンドを復興に生かす視点が重要です。

 

法則3.復興は従前からの問題を深刻化・噴出させる

復興期に「新たに現れた問題」として語られる多くの事象は、実際には従前から存在していた問題が深刻化し、一斉に噴出したものに過ぎ ません。つまり復興課題は事前に予見可能です。

 

 

→続きは本誌で(看護2026年2月号)