改正労働施策総合推進法施行前に知っておく カスタマーハラスメントの基礎知識

 

改正労働施策総合推進法施行を前に、カスタマーハラスメントの実際や、病院にもたらす影響を確認し、具体的に病院が取り組むべきことを伝えます。


友納 理緒
参議院議員・看護師・弁護士

医療現場を経験する中で、医療事故が発生したときに看護職をはじめとする医療者の力になりたいと考え、弁護士を志す。2011年弁護士登録。都内法律事務所勤務を経て土肥法律事務所を設立し、3年間、衆議院議員政策担当秘書を兼務。2020年から公益社団法人日本看護協会参与。2022年第26回参議院議員選挙で初当選。2024年11月 内閣府大臣政務官就任。2025年10月環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官就任。

 


第1回

改正労働施策総合推進法を知る

 

2025年6月4日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が国会で可決成立し、同11日に公布されました。本法は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下:労働施策総合推進法)と「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の改正を含むものです。本稿では、このうち、看護の現場でも深刻化するカスタマー・ハラスメント(以下:カスハラ)にかかわる労働施策総合推進法の改正について説明します。なお、改正法の施行期日は、公布の日から起算して1年6月以内で政令で定める日とされており、現在(2025年11月時点)、厚生労働省は2026年10月に施行する方針を示しています。したがって、事業主はこの時点までにカスハラ対策の体制の整備を求められることになります。

 

 

改正の背景

 

1.ハラスメント対策の法制化の流れ

 

ハラスメントは、性別・年齢・資格・キャリア・婚姻・人種・宗教・性的指向、疾病など多様な属性を理由に生じ、個人の尊厳を傷つけ、事業主にとっても社会的信用を失う重大なリスクとなり得るものです。

 

職場におけるハラスメントの例としては、パワー・ハラスメント(以下:パワハラ)、セクシャル・ハラスメント(以下:セクハラ)、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、カスハラ、ジェンダーハラスメント、モラルハラスメントなどが挙げられます。このうち、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントについては、カスハラよりも先に法制化がなされていました。

 

 

→続きは本誌で(看護2026年1月号)