地域ケアの今(35)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 

介護現場における

ヒヤリハット報告をめぐって

文:鳥海房枝

 

介護事故を減らすことを目的に、多くの介護現場でヒヤリハット報告書の提出が奨励されています。その根拠とされているのが、1:29:300のハインリッヒの法則です。これは重大な事故1件の背景には、軽微な事故が29件あり、さらにその背景には事故寸前の案件が300件あるという、米国の損害保険会社の社員・ハインリッヒが提唱した労働災害における経験則です。これを基に「ヒヤリ」としたら、あるいは「ハッ」としたら報告書を作成することで軽微な事故や事故寸前の案件に目を向け、重大な事故の発生を予防しようとする考え方です。

 

 

「職員によるヒヤリハット報告の差」

 

第三者評価で介護現場を訪問し、実際に報告書を見ると、ヒヤリハットと事故で様式を変えている所、同じ様式を使っている所などの違いがあります。また、「ヒヤリハットの報告書は書きやすいが、事故となると気が重い」といった職員の声も聞きます。

 

次に紹介する事例は、事故予防に熱心な特別養護老人ホームの取り組みです。

 

この特養では、「ヒヤリハット報告書作成強化月間」を設け、施設長は1カ月間、朝・夕礼時に職員にそのことを伝え続けました。すると、職員の傾向が報告書を多く提出した職員と、あまり提出しなかった職員とに分かれたのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年8月号)