すべての看護職の皆さまへ
いまもなお被災地で昼夜を分かたず懸命な看護に務めておられる方々に、心より感謝と敬意を表します。また、被災地から遠くにあって、病院、地域等で看護に従事しておられる方々にも敬愛と期待を込めて申し上げます。
いまこそ、「看護」の出番です。
震災からひと月以上を経たいま、被災地に必要とされているのは、もはや救命を旨とする医療ではないことは周知のとおりです。被災された方々にこれから継続して必要なのは心のケアであり、心身の健康に向けた、適切で具体的な援助であり、誰にでも約束されるべき「日常」という営みが将来にわたって守られることです。それらは、まさしく「看護」にほかなりません。
病を治すことを第一義に置く医療だけでは、豊かな生を全うしがたいことに、社会はこの震災以前から気づきつつありましたが、医療に代わるそれが何であるかについては具体的に語られることはありませんでした。看護職自身にもその十分な自覚と準備があったとはいいきれないでしょう。そのさなかに震災に見舞われ、看護はその必要性を一気に認知されることになりました。
あなたが被災者の肩にそっと手を置き、その苦痛に耳を傾け、適切な手当てをするたびに、苦悶のなかにあるその人は、自分が心底から求めていたものが薬や治療ではなく、看護であったことを知るでしょう。その気づきがいまや被災地のみならず、日本中に急速に広がりつつあります。
これからの看護は、医療をも包含する、ケアという大きな傘のもとで、ケア全体をその最前線で牽引していくことを求められています。医療中心から看護主体のケアへ変わるべきときを迎えて、すべての看護職者が機動性に富んだ判断と行動を示していかれることを、看護を敬愛する者として強く願い、弊社の務めを一層深く認識していることをお伝えします。
平成23年4月
株式会社日本看護協会出版会 代表取締役社長