『学習課題とクイズで学ぶ看護マネジメント入門』発行!(原玲子先生インタビュー ②)

[1]からのつづき…)

 

また「事故発生のメカニズム――あるファミリーレストランで起きたミステリー」という項目のように、身近な事例を用いて「謎解き」をしながら、医療事故発生のメカニズムの理解へつなげる工夫をしている頁もあります。

 

危険予知トレーニング(KYT)や根本原因分析法(RCA)の方法についても、すぐに実践・応用できるようにわかりやすく説明しており、楽しく学習しながら医療安全管理への理解を深めると同時にリスクセンスも養えるような画期的な構成にしているつもりですので、学生や新人看護職員が読むのにもってこいの内容です。もちろん復習したいナースの皆さんにもお薦めです。

 

また、「医療現場における業務上の危険」も本書の特徴的な部分かもしれません。医療現場は、医療従事者にとっても潜在的な危険がいっぱいです。安全で質の高い医療の提供には、医療従事者自身が安全に業務を実践することが前提になります。従業員にとっての安全な職場づくりは、マネジメント上、課題となる部分でもあります。

 

本書は、「職業感染」「放射線被曝」「抗がん剤への曝露」などに加えて、「職員に向けられる暴力」等を取り上げ、実際にマニュアルとして応用することも可能なように、ポイントをまとめています。

 

 

まずは学習課題にチャレンジしてみよう

 

───16のテーマごとに、「学習のねらい」が示され「学習課題」が設定されています。まずは、自分の知識を基に解いてみるとよいですね。

 

本書は、16部のテーマごとに、「学習のねらい」と「学習課題」を示しています。一般的に、効果的な学習方法として、問題意識を持つことが必要だと言われます。しかし、「問題意識を持ちなさい!」と言って「はい!  持ちました!」となるような性質のものではないので、本書では、学習課題を設けることで、「この答は何だろう?」「こうだろうか?」などと関心を持てるような仕掛けをつくりました。それによって、答探しのためにも本文を熟読するようになるので、集中できるのではないでしょうか。

 

また、学習課題だけなく、本文中には、「○×クイズ」や「穴埋めクイズ」などがたくさん出てきます。これも問題意識を持ってもらうための仕掛けです。私自身が学部の講義で実際に行っているのですが、学生には大変好評です。試しに、やってみてください。「ああ、そういうことか」と驚くほど理解しやすいですよ。

 

 

忙しい日々の中で学習を継続するためのヒント

 

───まずは、この入門書にチャレンジして、その後、忙しい日々の中でどのように学習を深めていったらよいでしょうか。

 

「継続は力なり」と言われ、誰もが、継続して学習することの重要性を認識していると思います。自分で課題を見つけて学習を進めるに越したことはないのですが、それはなかなか難しいものです。また、「勉強」と言うと、定期的に机に向かい本を開いて……という場面をイメージします。これは学生には必須な姿勢ですが、仕事をしている時はなかなか難しいものです。

 

反面、現場で仕事をしていると、「あれ?」とか「なぜ?」とか、疑問を持つことが多々ありますね。その日々の疑問をそのままにしないことが非常に大切です。経験だけで結論を出すのではなく、「本を読む」「先輩に聞く」「上司に聞く」ことなどを通して、理論的背景を確認する姿勢を持つことが、自己啓発を進める上でとても大切です。

しかし、一人で学習できればよいかもしれませんが、効果を上げるためには、必要なことを適切な時期に学習する必要があります。

 

そのためには、「学習する職場づくり」が重要です。看護管理者には、職員のニーズ調査を行いながら、学習や成長の機会となるような職員個々の資質を高めるための仕組みをつくることが求められています。

 

本書は、100ある項目のキーワードからの検索がしやすく、それぞれのポイントを押さえて端的に解説しています。挙げている引用文献も比較的入手しやすいものです。研修会で頭を悩ませる「研修の内容」や「課題レポートのテーマ」等の教育企画のヒントとなるガイドブックとしてもお役に立てるかと思います。

 

キャリアには、経験を重ねることで、自ずと発達する側面もあるのですが、それを意図的に行うことで、自分の成長を可視化することができ、やり甲斐感や達成感につながります。

 

日々の実践には必ず意味があります。それを実感していくためにも、本書によって一人ひとりのマネジメントについての学習のお手伝いができれば幸いです。

 

(月刊「看護」2011年12月号「SPECIAL INTERVIEW」掲載)

 

 

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『学習課題とクイズで学ぶ看護マネジメント入門』

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