はじめに(日本看護協会常任理事 福井トシ子)
「『爪のケア』に関する刑事事件」は、 2007 年 6 月から 3 年以上にも及び、 2010 年 9月にようやく結審しました。これまでの日本看護協会(以下、本会)の取り組みや支援方法、また看護職賠償責任保険制度の一環である、サービス推進室の取り組みや支援方法について、関係者ヘ報告するとともに、日本看護協会機関誌「看護」でも 2011年3 月号に特集をしました。
結審を受け、関係各種会議で「『爪のケア』に関する刑事事件」の概要や、支援の具体的な方法、福岡県看護協会と本会の連携などについて、また、弁護団ヘのサポート体制など、詳細な支援の実際を、報告書を用いて報告して参りました。その報告回数は、10数回にも上ります。報告のたびに、会議に出席されている関係者の中から、報告書は多くの示唆に富んでおり、資料性も高いことから、報告書を書籍にするなど、教材のような形にできないかという要望をいただきました。
報告書の作成に関与した本会の事業開発部、看護職賠償責任保険制度を担当する管理部や、一連の報道対応を担当してきた広報部も、3年余りに及ぶ支援の実際が、報告書にとどまり、これから看護を学ぶ方々や、看護に従事している方々の目に留まらないのではないか、風化してしまわないだろうかという、残念な思いが正直なところありました。そのような中、報告書を教材のような形にできないかという要望を、関係者一同、ありがたく受け止めました。
書籍化することで、多くの看護職の皆さまに、「『爪のケア』に関する刑事事件」とは何だったのか、看護にどのような影響を及ぼしたのか、看護の現場にどのような教訓を残したのか、ということを広く知っていただく機会になると考えました。本会の役員会でも全会一致で、書籍化を進めることとなり、これらの経緯を日本看護協会出版会にご相談したところ、書籍化が具体化し、その準備が急ピッチで進められ、本書の結実をみたのです。
本書は、「『爪のケア』に関する刑事事件」に関連する各種報道が、裁判の経過とともに変化したことを示す記事の内容や、本会から発信した情報、また事件の概要や本会と看護職賠償責任保険制度が行った支援の実際、特別講演会の内容とまとめ、さらに、論文なども含め、再構成を図ったものです。看護現場の第一線にいる看護職の方々はもとより、看護を学び始めた方々や、看護学研究科などに在学中の方々、医療安全に携わっている方々、そして看護管理者に広く読んでいただき、「看護行為とは何か」を確実に自分のものにしていただくための一助として、本書を活用していただきたいと思います。
★本書の内容を一部公開しています★
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◯第1章:解説編
日本看護協会の活動と見解:職能団体としての役割と支援の実際から(日本看護協会常任理事 福井トシ子) 「『爪のケア』に関する刑事事件」の事件報道と日本看護協会の広報活動(日本看護協会 広報部)
◯第2章:資料編
資料2「『爪のケア』に関する刑事事件」の支援報告について
おわりに(前日本看護協会事業開発部部長/新潟県立看護大学教授 坪倉繁美)