精神科医・心理療法家・僧侶というユニークなメンバーによって上梓された本書。きっかけは、「ナースのバーンナウト予防」をテーマにしたワークショップでした。これまでナースに必要とされてきた態度や姿勢が、共感疲労やバーンナウトを引き起こすと考えた著者らが、本書で新たなアプローチ法を提唱しています。
■「傾聴・共感」から「慈悲喜捨」へ
「Part1」では、精神科医の保坂隆さんが対人援助職ならではのストレス状況やバーンナウトの実際を分析した上で、「慈悲喜捨」という新しい視点について紹介します。
看護職に求められる「傾聴・共感」の姿勢は、ときに「誤った共感」を引き起こし、バーンナウトにつながる可能性があるといいます。それを解消するのが「慈悲喜捨」です。これは、仏教がめざす心のあり方「四無量心」に由来するもので、相手を慈しみ(=慈)、悲しみを取り去り(=悲)、喜びをともにした(=喜)のち、距離を置いて温かく見守ること(=捨)を意味しています。
最後の「捨」は最も難しいものですが、看護職には不可欠な視座であり、章末に示した「慈悲の瞑想」によって身につくとしています。
■「ねばならない思考」から「健全思考」へ
「Part2」は、心理療法家の川畑のぶこさんによる、サイモントン療法のメソッドに基づいたアドバイスです。
私たちは、「完璧であらねば/喜ばせねば/頑張らねば/強くあらねば/急がねば」といった「ねばならない思考」にとらわれがちです。特に対人援助職では、これらの行き過ぎた不健全思考に加え、「自分をケアすること」に違和感や抵抗感を抱く人が多いといいます。
しかし、周囲の人に十分なケアを提供するには、心身と同様、思考も健全であるべきでしょう。
ここでは、健全思考を引き出すためのトレーニングとして「喜びのリスト」「快/不快のリスト」「病気の恩恵リスト」の作成を推奨し、「ABC理論」「ビリーフワーク」によって、これまでとらわれていた思考パターンからの脱却をめざします。
■「ストレスフルな私」から 「生きがい感をもてる私」へ
「Part3」では、飛騨千光寺住職の大下大圓さんが、幅広いトピックスについて仏教の思想を踏まえて解説します。
ここでキーワードになるのが「レジリエンス」です。「レジリエンス」とは、圧力を受けてへこんだ風船が再び元の形に戻るような、復元力・回復力・立ち直りなどを意味する言葉です。いかなる逆境にあっても、そこに自身の人生の課題を適応させ、健全な発達を遂げる人間力のことを指しており、本章で述べる「SOC(首尾一貫感覚)」の概念にも共通するものです。
そのほか、写経や料理など手軽に取り組めるものから、対人援助職のために自身が開発した「4つの瞑想メソッド」まで、数多くのセルフケア法を紹介しています。
今日からできるセルフケア(思考の切り替えや簡単なレッスン)を
多数ご紹介!
保坂隆・川畑のぶこ・大下大圓 著
●A5判 176ページ
●定価(本体1600円+税)
ISBN978-4-8180-2102-0
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)
[目次]
Part1
私を慈しむ〜「傾聴・共感」から「慈悲喜捨」へ
1 「バーンナウト」いまむかし
2 ナースに求められてきた「傾聴」と「共感」
3 「共感」から「慈悲」へ
4 「慈悲の瞑想」のレッスン
Part2
私をもてなす〜「ねばならない思考」から「健全思考」へ
1 ナースが陥りがちな「ねばならない思考」
2 「ねばならない思考」から「健全思考」へ
3 Me Firstで自分をもてなす
4 ナースのための「論理療法」
5 「ビリーフワーク」に取り組む
Part3
私が幸せになる〜「ストレスフルな私」から
「生きがい感をもてる私」へ
1 ストレスにさらされる現代人
2 「レジリエンス」と「SOC」
3 「怒り」を正しく理解する
4 仏教が説くもの
5 幸福に生きるということ
6 身体をほぐすレッスン
7 自分を知るレッスン
8 自分を高めるレッスン
時間を持ってみませんか?
大下大圓 編著
●B5判 164ページ
●定価(本体2000円+税)
ISBN978-4-8180-1987-4
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)
【看護ケアに活かせる】
実践のヒントが満載!
大下大圓 編著
●B5判 248ページ
●定価(本体2300円+税)
ISBN978-4-8180-1844-0
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)