『放射線治療を受けるがん患者の看護ケア』の著者である清水勝一先生(兵庫県立粒子線医療センター 診療放射線技師)が、放射線線量計についての基本情報を、Q&A形式でまとめてくださいました。どこで入手できるのかや、どこに装着するのかなど、実用的な内容となっています。
福島原発近隣でケアにあたられている方、これから現地へ支援に行かれる方は、ぜひ参考にしてください。
注)このQ&Aは東日本大震災にあたって特別に寄稿していただいたものです。書籍の掲載内容とは異なります。
Q:個人用の放射線線量計とはどういうものですか?
A:診療放射線技師や血液造影検査に携わる医師や看護師などが着用しているバッジタイプの線量計があります。これは病院などで広く使用されているものです。着用後、専門の測定会社に提出し、測定してもらって初めて、被ばく線量の結果がわかります。安価で取扱いも非常に簡単なのが特徴ですが、リアルタイムに被ばく線量がわからないのが欠点です。
ほかに電子式の線量計もあります。バッジタイプに比べて高価ですが、リアルタイムに被ばく線量を知ることができます。
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Q:個人用の放射線線量計がほしいのですが、どこで手に入れられますか?
A:放射線線量計は病院や団体で所有するものであり、個人で所有するには高額です。バッジタイプのものでも1か月間着用し、年間を通じて使用するのが一般的です。短期間の使用には不向きです。
もし、職場で個人用の線量計を使用しているのであれば、それを借りて被災地で使用するのも1つの方法です。ただしその際は、職場での被ばく線量と被災地で活動中の被ばく線量とを区別する必要がありますので、必ず職場の放射線管理責任者に相談してください。
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Q:健康に影響はないと言われていますが、どうしても活動中の被ばく線量が気になります。本当に大丈夫なのでしょうか?
A:通常の活動ができる事故原発の避難区域外であれば、活動中の被ばく線量は、健康上、何らかの影響を及ぼすものではありません。
被ばく線量は、活動地域の1時間あたりの放射線量と、活動した時間の積で求めることができます。屋内での活動あれば、その値はより低いものとなります。
平常時でも我々は自然界からの放射線による被ばくを受けているため、被ばく線量は「0」にはならないことを覚えておいてください。
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Q:個人用の放射線線量計を持っています。どこに着用すればよいですか?
A:男性は胸部、女性は腹部に着用することが放射線関連法令で決められています。
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Q:個人用の放射線線量計を着用して活動しました。測定された値はどのように評価すればよいでしょうか?
A:放射線関係法令では、放射線に関わる業務に従事する者の被ばく線量について、年間50mSv(ミリシーベルト)までと決められています。この値を超えなければ、健康上何らかの影響を及ぼすものではありません。
また、我々は日常的に自然界から放出される放射線による被ばくも受けているので、測定値が「0mSv」でないからといって、原発事故の影響を受けているわけではありません。
*1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv(マイクロシーベルト)