臨床ナースから看護研究者まで
研究発表のプレゼン
もっとよくなります!
本書は、全頁フルカラーでお届けします。
スライド画面がクッキリ・ハッキリ鮮明で、前田さんの色使いのテクニックが大いに参考になるはずです!
前田樹海 著
●A5並製 128ページ
●定価(2000円+税)
ISBN:978-4-8180-1990-4
発行:日本看護協会出版会 (TEL:0436-23-3271)
心を打つスピーチ×伝わるスライド=神プレゼンを持論とする前田樹海先生。有言実行で教え子の古澤圭壱さん(東邦大学医療センター大森病院)との共同研究で栄えある受賞を果たしました。そしてタイミングよく前田さんのオーラル、ポスター、プレゼンのメソッドがごっそり詰まった『研究発表のプレゼン もっとよくなります!』が10月下旬に発売されます。本書執筆のあれこれをうかがいました。
(聞き手:青野昌幸)
――前田樹海インデザインDTPシリーズ第2弾*、いよいよ発売ですね!
第1弾の『あなたのスマホ 看護に役立ちます!』を2015年1月に上梓したので、2年くらいは執筆を休もうかなと思っていたんですよ。ところが突然、本書の担当編集者の青野さんが2015年2月に打ち合わせに来られたんです。「スマホの次はプレゼンでいきましょう。スライド画面もカラーで掲載するのにぴったりな素材ですよ」と熱心に執筆をすすめられた結果、この企画が動き出しました。
——約10年前、ある学会で前田さんのプレゼンを拝聴したとき、一番印象に残ったのがスライド画面のかっこよさだったんです。映画「犬神家の一族」のタイトルバックのような大胆かつ鮮烈なデザインで、「このメソッドをいつか本にしたいなぁ」とずっと機会をうかがっていました。ようやく思いが形になり感慨深いです。
ご期待にそえられたかどうかは、読んでいただいた方の反応次第ですね。本書は、プレゼンの概論、スライド構成の理論、スライドデザインの理論、スピーチの理論、実事例によるまとめの5章で構成されており、施設でのプレゼンや学会発表に役立つエッセンスを満載しています。
——そもそも看護系学会で研究発表をしたりすることは困難なミッションだと考える人が多いのでしょうか?
僕はプレゼンも学会発表も、ちょっと憂鬱ですね。緊張もします。しかし、プレゼンはできればしないに越したことはないとか、学会発表に失敗は許されないなどとと思っている人が多いと思うのですが、それについては、僕はそう思わないのです。
なぜなら、プレゼンはコミュニケーションだからです。看護ケアにおいてコミュニケーションは必須というのは誰もが認めるところです。もちろん、ちょっと億劫だったり、気の進まないコミュニケーションもあるかもしれません。それでも、コミュニ
ケーション自体が目的になることはないですよね。
プレゼンや学会発表も何かを伝えるための手段に過ぎません。伝えた後に、意見交換できたり、議論が深まったり、新しいアイデアが生まれたりすることがとても重要だと思っています。でも、そのためには、誤解されないように伝えることが大事です。
そして、伝わらないプレゼンはとても残念なことです。本書は伝わらないプレゼンの撲滅、プレゼンの転倒を予防するために、その秘訣といいますかメソッドを紹介しています。
——本の中身で言うと、本書は見開き2頁で1つのテーマが完結します。それが55本収録されています。見出しだけ読んでも面白そうですね。
見出しはプレゼンに例えれば「つかみ」です。つかみは非常に大事だろうということで、私と青野さんが頭を絞って考えましたよね。まあ見出しがそのままネタバレになっているテーマもありますので、見出しだけまず読まれてポイントをつかんでいただくのもいいんじゃないかと思います。
例えば、わかりやすい10本のテーマを挙げると、
●プレゼンの極意は、自分を神の視点で見ることである
●パワーポイントではテンプレがカブります!
●適切なスライドの枚数は発表時間から逆算できる
●「〜に関する研究」というタイトルはもうやめませんか
●プレゼンの冒頭で聴衆の心をわしづかみにしよう
●結果の提示はマクロからミクロへが必勝パターン
●論理的なプレゼンは聴衆におや?と思わせない
●文字サイズの最低限は24ポイント
●箇条書きはルールを厳守すれば重宝するフォーマット
●グラフは、折れ線・棒・散布図の3種類でことたりる
などですね。
——何かすごく役に立つことが書いてあるんじゃないか? という期待が高まりますね。
文章もそうですが、ページのスペースの半分を占めるスライド画面にもご注目ください。最初は過去の自分のスライドをそのまま載せていければいいと考えていたのですが、やはりDTPをしているうちに修正に熱中してしまいました。もしかして文字原稿より時間をかけたかもしれません。全頁カラーなのでそこも注目していただきたいです。
——最後に、本書に関連するメッセージは何かありますか?
人に何かを伝えたいときに、メールではなく、実際に会って口頭で伝えたいことがよくあります。直接会って話をすれば、相手が理解したかどうかは表情や相づちからある程度わかりますし、誤解が生じた場合もその場で解消できます。そこにプレゼンの存在理由があると僕は思っています。
ポスターにしても、オーラルにしても基本的にその場にいる人間が相手です。何かを間違いなく伝えたい場合にとても有利です。だからといって、それに甘えていてはいけません。プレゼンの内容をきちんと伝えるためには、事前の準備がとても大事です。
その際に心がけたいのが自分を神の視点で見ることです。人がいなくても、人が見たら、聞いたらどう伝わるだろうかということを想像し、自分を客観視する。これを伝えることが、本書のねらいです。
* PC上で本のレイアウトを組み上げ、印刷データとして完成させること。通常は印刷会社のDTPオペレータが行う