155号クリティーク記事「Advice」より

 

 

INR日本版155号(4月1日発売)に掲載された翻訳&クリティーク記事より、評者・増野園惠先生ご執筆の「Advice」部分を、以下にご紹介します。

 


伝統的な中国の看護の紹介:概念・理論・実践についての総括的レビュー〈Hao Y., et al. (2011) Introducing traditional Chinese nursing: a review of concepts, theories and practices. International Nursing Review 58(3), 319-327〉

 

評者:小坂裕佳子・増野園惠

 

Advice:

 

今回の論文クリティークは、筆者と若手研究者らとで行う論文抄読会の第1回目で取り上げられ検討されたものである。この抄読会のメンバーは、看護システムマネジメントに関心を持っており、この分野の研究動向や研究手法への理解を深めることを目的に集まっている。

 

しかし、メンバーの多くが基礎看護学、成人看護学、高齢者看護学、在宅看護学などの領域で看護基礎教育に携わっており、検討する論文のテーマは実際には非常に多岐にわたる。したがって、今のところテーマや研究デザインにはあまりこだわらず、見識を広められるよう、また互いに学びあう(メンバー同士、またクリティークを通して論文の著者から学ぶ)姿勢で取り組んでいる。

 

今回の論文も、この抄読会がターゲットとするテーマから少し外れた感はあったものの、伝統中医看護(TCN)の紹介ということで、タイトルと要約からは非常に興味を惹く論文に思われた。小坂も述べているように、全人的なアプローチや代替補完療法に対する関心が高まる中、どの看護実践分野においても実践に新たな視点を与えてくれるのではないかと期待があったからである。

 

また、レビュー論文(総説)をいかにクリティークするかということもチャレンジであり、この論文が選択された理由でもあった。メンバーはそれぞれ、これまでにレビュー論文を読んだ経験はある。しかし、いわゆる研究論文とは異なり、レビュー論文をクリティークした経験はほとんどなかった。

 

関心のあるテーマの研究動向や研究課題を検討する上でレビュー論文の活用は重要であり、レビュー論文を評価できる目を養うことが必要である。また、自身がしっかりとした文献レビューを書く上でもレビュー論文のクリティークを通した学びが重要であると思われた。

 

 

レビュー論文は「特定の問題に関する実用的な情報を提供する論文」1)あるいは、「特定分野の最新の研究動向を全体的に展望し、研究の現状・問題点・今後の動向などを示唆する論文」2)である。実際に学術誌等に発表されているレビュー論文を見てみると、その形式はさまざまである。

 

あるテーマに関して、その領域の専門家が既存知識や研究の動向などを総括的にまとめているものや、体系的かつ網羅的に先行研究をレビューしたシステマティック・レビュー、研究プロセスの一部として行った文献レビューを独立した論文として報告したものもある。また最近では、メタ分析やメタ統合などの論文も多く見られるようになっている。

 

レビュー論文と一口に言ってもそのレベルはさまざまであるが、あるトピックス(テーマ)に関して、何がどこまで明らかにされているのか、残された課題は何かなどを明確にするという目的は共通しており、クリティークの視点も共通する。

 

理想的には先行研究が体系的かつ網羅的に集められ、系統的な分析手法によって検討されたものが、最も信頼性の高いレビュー論文であると言える。しかし、新たな研究課題については先行研究がほとんど存在しないことも多く、研究結果の集積によらないからとう言って価値がないと結論づけるべきではない。取り上げられた課題、レビューの目的と文献検索の適切性、論拠の明確さなどから総合的に判断することが重要であろう。

 

また、メタ分析やメタ統合の場合には、それぞれ系統的な研究手法として発展してきていることから、用いられた手法が適切であるかなど、より具体的で詳細な検討が必要となる。

(増野)

 

〈参考文献〉

1)アメリカ心理学会(APA):APA論文作成マニュアル第2版, 前田樹海・江藤裕之・田中建彦訳, 医学書院, p.2, 2011.

2)山崎茂明・六本木淑恵:看護研究のための文献検索ガイド 第4版, 日本看護協会出版会, p.22, 2005.

3)University of Texas Libraries : What’s a “Review Article?”, 2010. (http://www.lib.utexas.edu/lsl/help/modules/review.html) [accessed 2012.1.19]

 

 


インターナショナル ナーシング レビュー155号

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