「わかりやすい言葉で見える化された、看護師のケア」
川嶋みどり(日本赤十字看護大学教授)
まるで、VTRの画面を見るような看護場面や看護師の思いを浮き彫りにした著書である。
看護を深く愛し理解する著者は、医療ジャーナリスト。多くの看護師に密着取材し、看護の受け手である患者さんにも直接問いながら、看護の本質と看護師のおかれている状況に迫った。
看護が正当に理解されにくいのは、看護の深さと広さにあり、人々の目に触れにくく言葉にしにくい実践と、ケアの向こうの臨床判断の複雑さにあることを、ルポを通して紐解いていく。認定看護師や専門看護師による臨床実践成果を大切にしながら、分化のパーツをつなぐジェネラルな看護を価値づけ、医学の歩んだ専門分化の後追いを警告する。チーム医療を織物にたとえ、縦糸の職種をつなぐ横糸は看護師、連綿とつむぎつないで癒しの布を織るのだと。
一人ひとりの看護師の看護の物語を楽しく語れば、社会に向かっての「見える化」となると同時に、有用な社会資源である新人看護師の定着も良くなるに違いない。
看護の外から看護に向けた熱いメッセージをありがとう。
( 月刊「看護」2010年8月号「Special Book Review」より)