POTTスキルで解決〜食事ケアの困りごと 看護で食べるよろこびを

 

 

誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。

 

執筆

定松 ルリ子 さだまつ るりこ

株式会社ケアライフエナジー

訪問看護ステーションアスレ

摂食嚥下障害看護認定看護師

 


知りたいこと その

 

誤嚥性肺炎を繰り返す人のポジショニングは

どうすればいい?

 

ポジショニングによる

誤嚥性肺炎の予防

 

食べ物や唾液などが声帯を越えて気管内に流入することを誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は誤嚥を繰り返すことで生じる肺炎で、誤嚥物による侵襲が多くなり、炎症に対する免疫力・抵抗力が低下することにより発症します。誤嚥性肺炎による日常生活や社会活動の制限は、精神的なストレスやQOLの低下にもつながってきます。

 

看護ケアにおける誤嚥性肺炎の再発予防は、嚥下訓練や口腔ケアだけでなく、生活援助の視点に立った多角的な対応が必要となります。食事のポジショニングはその一例で、以下のような予防効果が期待できます。

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喪失と死を共に受けとめ、助けあって生きる コンパッション都市・コミュニティへの招待

喪失と死を共に受けとめ、助けあって生きる

コンパッション都市・コミュニティへの招待

 

 

竹之内 裕文

静岡大学未来社会デザイン機構副機構長

農学部・創造科学技術大学院 教授

 

第2回:なぜコンパッション都市・コミュニティなのか

 

今回は、コンパッション都市・コミュニティが求められる理由について、アラン・ケレハーの『コンパッション都市 公衆衛生と終末期ケアの融合』(以下、『コンパッション都市』)に即して、掘り下げて考えます。

 

予め展望を示しておくことにしましょう。なぜコンパッション都市・コミュニティが必要なのか。それは喪失と死の多様な経験をわかちあい、助けあって生きる社会、つまり喪失と死の多様な経験を包摂する社会を築くためです。これを実現するためには、従来のエンドオブライフケアとパブリックヘルスでは不十分であり、これらを批判的に発展させ、コンパッション都市・コミュニティを築く必要があります。

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精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 

小野坂 益成 ●おのざか ますなり

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 講師

 


 

第14回 近いからこそ必要な客観性

 

前回のあらすじ

こころさんはカワウソ先生に、精神科訪問看護の道に入ったいきさつや、現場での経験で忘れられないエピソードを聞きました。先生の話から、精神科訪問看護で重要な視点を得ることができました。

 

 

こころ カピバラ先生、お久しぶりです!

 

カピバラ ああ、こころさん、久しぶり! カワウソ先生はいないよ。

 

こころ そうなんですね。でも、今日はカピバラ先生に会いに来たので、大丈夫です!

 

カピバラ えっ……いつもカワウソ先生に相談されているので、びっくり。どうかしたの?

 

こころ はい。少し前にカワウソ先生に最近の出来事を話す機会があったんですけど、カピバラ先生にも話したいことがあって、来ちゃいました!

 

カピバラ そういうことか。こころさんも精神科訪問看護を始めてから2年目になったしね。もう慣れたかな?

 

こころ はい、最近は順調です! 利用者さんともだいぶ信頼関係を築けるようになってきたと思います。ただ、かかわる期間が長くなるにつれて、私が感情移入をするようになって……、「これでいいのかな」とも思うんです……。

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市民とともに歩むナースたち(10)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子 いば のりこ

聖路加国際大学

PCC開発・地域連携センター

看護情報学 准教授

 


「つながる暮らしの談話室:佃の渡しサロン」

地域の高齢者が自分らしく生きる力を育むナラティブ・コミュニティ

 

「るかなび」で蒔かれた種

「佃の渡しサロン」(以下:サロン)は、本連載第1回・第2回(2025年1・2月号)で紹介した「聖路加健康ナビスポット:るかなび」で活動していた7名のメンバー(市民ボランティア、看護師・保健師、歯科衛生士、司書)が中心となって立ち上げた地域サロンです。同じ中央区内ではありますが、大学の外で活動しています。

 

「るかなび」が始まったとき、一緒に活動して
いた市民は地元の人ばかりではありませんでした。ボランティアとして活動するために、遠方から通われる人も多かったようです。私たちは、そういった人たちが、一緒に活動する中で主体的に健康生活を築いていくためのヘルスリテラシーを身につけ、自分たちの持ち味を生かしてピープルセンタードケア(以下:PCC)の担い手として、いつか地元や新たな場へと巣立ち、PCCが広がっていってほしいと願っていたのです。それが実現したのはPCCが提唱され、「るかなび」が始まってから約10年後の2015年のことでした。

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実践に役立つ訪問看護の注目論文(11)

〈新連載〉

 

第 11 回

徘徊(ひとり歩き)の人の安全な外出について

山川 みやえ・繁信 和恵・関口 亮子

 

今月の注目論文

道路網の構造が認知症に関連する行方不明事案に与える影響:

空間的バッファ解析

Puthusseryppady, V., Manley, E., Lowry, E., et al. : Impact of road network structure on dementia-related missing incidents: A spatial buffer approach, Scientific Reports, 10, Article 18574, 2020.

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