映画と、生きるということ(21)


(No.21)

名画が語る“普遍性”

『火垂るの墓』

 


岩田 健太郎

神戸大学大学院医学研究科 教授/神戸大学医学部附属病院感染症内科 診療科長
感染症内科医。『ワクチンを学び直す』『抗HIV/エイズ薬の考え方、使い方、そして飲み方ver.3』など著書多数。趣味は、映画や落語の鑑賞、スポーツ観戦など。

 

 

映画史上に残る傑作

 

8月15日、終戦の日に「金曜ロードショー」★1で放映していたのを録画して鑑賞。今回で2回目だ。最初に観たのは1988年で、島根県の映画館。『となりのトトロ』(以下:『トトロ』)と同時上映だった。昔の映画は2本立てが基本で、案外、昭和の日本人は暇だったのだろう。
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医療行政なるほど塾

厚労省概算要求は過去最大の34兆7,929億円

医療・年金等の予算は自然増4,000億円を加算して要求

 

「社会保険旬報」編集部

 

 

厚生労働省は8月29日、2026年度予算の概算要求を財務省に提出しました。一般会計の総額は過去最大の34兆7,929億円で、前年度当初予算と比べると4,865億円の増加となっています。厚労省予算の大半を占める医療・年金等の経費は対前年度比3,516億円増の32兆9,387億円となりました。物価・人件費の上昇により医療機関の経営は厳しい状況で、年末の予算編成に向けて診療報酬改定の対応が注目されます。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

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精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 

小野坂 益成 ●おのざか ますなり

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 講師

 


 

第14回 近いからこそ必要な客観性

 

前回のあらすじ

こころさんはカワウソ先生に、精神科訪問看護の道に入ったいきさつや、現場での経験で忘れられないエピソードを聞きました。先生の話から、精神科訪問看護で重要な視点を得ることができました。

 

 

こころ カピバラ先生、お久しぶりです!

 

カピバラ ああ、こころさん、久しぶり! カワウソ先生はいないよ。

 

こころ そうなんですね。でも、今日はカピバラ先生に会いに来たので、大丈夫です!

 

カピバラ えっ……いつもカワウソ先生に相談されているので、びっくり。どうかしたの?

 

こころ はい。少し前にカワウソ先生に最近の出来事を話す機会があったんですけど、カピバラ先生にも話したいことがあって、来ちゃいました!

 

カピバラ そういうことか。こころさんも精神科訪問看護を始めてから2年目になったしね。もう慣れたかな?

 

こころ はい、最近は順調です! 利用者さんともだいぶ信頼関係を築けるようになってきたと思います。ただ、かかわる期間が長くなるにつれて、私が感情移入をするようになって……、「これでいいのかな」とも思うんです……。

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市民とともに歩むナースたち(10)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子 いば のりこ

聖路加国際大学

PCC開発・地域連携センター

看護情報学 准教授

 


「つながる暮らしの談話室:佃の渡しサロン」

地域の高齢者が自分らしく生きる力を育むナラティブ・コミュニティ

 

「るかなび」で蒔かれた種

「佃の渡しサロン」(以下:サロン)は、本連載第1回・第2回(2025年1・2月号)で紹介した「聖路加健康ナビスポット:るかなび」で活動していた7名のメンバー(市民ボランティア、看護師・保健師、歯科衛生士、司書)が中心となって立ち上げた地域サロンです。同じ中央区内ではありますが、大学の外で活動しています。

 

「るかなび」が始まったとき、一緒に活動して
いた市民は地元の人ばかりではありませんでした。ボランティアとして活動するために、遠方から通われる人も多かったようです。私たちは、そういった人たちが、一緒に活動する中で主体的に健康生活を築いていくためのヘルスリテラシーを身につけ、自分たちの持ち味を生かしてピープルセンタードケア(以下:PCC)の担い手として、いつか地元や新たな場へと巣立ち、PCCが広がっていってほしいと願っていたのです。それが実現したのはPCCが提唱され、「るかなび」が始まってから約10年後の2015年のことでした。

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