能登半島の災害から学ぶべきこと(企画協力:酒井明子)

 

第4回

能登半島地震の災害関連死①

 

上田 耕蔵◉1975 年神戸大学医学部卒業後、神戸医療生活協同組合神戸協同病院に就職。1993 年より現職。1995 年の阪神・淡路大震災において災害関連死という概念を提唱した。

 


 

災害関連死は災害ごとに違う様相を見せます。能登半島地震の特徴は、①後期高齢者比率増:福祉施設支援の課題、②地理的問題:自衛隊空白地、③医療職員不足:災害拠点病院の機能低下です。さらにマスコミの災害関連死の捉え方に問題を感じました。概念の見直しも必要と思われます。

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【SPECIAL BOOK GUIDE】令和7年版看護白書 災害時におけるこれからの看護

 


自然災害や新興感染症の発生に際し、看護は何をなすべきか

災害支援ナースや医療・保健・福祉活動チーム、

関係団体等の活動事例を交え、具体的に解説!


看護界における〈最新・最重要のデータと情報〉を集約して発信する『看護白書』。令和7年版では、医療法・感染症法改正に伴い、2024年4月より「災害・感染症医療業務従事者」として法制度等に基づく新たな仕組みとなった「災害支援ナース」について解説するとともに、同年に能登地方で発生した災害に対する支援活動を、災害支援ナースや関係機関等の看護職ら自身が振り返り、整理します。

 

法令等に基づく新たな仕組みとなった

災害支援ナース

 

1995年1月発生の阪神・淡路大震災において、兵庫県看護協会と兵庫県立看護大学(現・兵庫県立大学)が連携し、看護ボランティアの派遣調整を行ったことが、「災害支援ナース」誕生のきっかけとなりました。

 

以降、2011年3月発生の東日本大震災や2016年4月発生の熊本地震、2024年1月発生の能登半島地震などの災害時において、多くの災害支援ナースが被災地等に派遣され、救護・支援に尽力してきました。

 

しかし、災害支援ナースはボランティアであり、被災地等への派遣に当たっては、勤務先の医療機関等で休暇を取得して活動することが多く、事故補償のあり方や活動対価などの課題が存在しました。

 

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看護と経営(18)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.18 実践編⑫

在院日数短縮・入退院支援加算の算定率向上・ 新規患者獲得をめざす

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保

険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、

ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し

ている。

 

 

急性期病院の入院が

「要介護度悪化」につながることも

 

前号で、DPC病院では、入院患者を期間Ⅱまでに退院させることが病院経営にとっても、患者のADL・QOLなどの点からも非常に重要であること、さらに期間Ⅱまでの退院に向けて、後方病院や介護施設などとの連携を進める必要があることを確認しました。今回は、このうちの「急性期病院から回復期病院などへの早期転院」に焦点を当てて、その重要性を考えてみます。

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POTTスキルで解決〜食事ケアの困りごと 看護で食べるよろこびを

 

 

誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。

 

執筆

迫田 綾子 さこだ あやこ

日本赤十字看護大学名誉教授

POTT プロジェクト代表

 


知りたいこと その❺

 

ベッドからずり落ちながら食べている人をよく見かけます。 ポジショニングはどうすればいいですか?

 

 

ある日、夕食時に利用者Aさんの部屋にうかがうと、Aさんはベッド上に横たわり、上体を左に傾けて柵を握っていました。右側マヒのため両手が使えず全介助の状態で、健側の左側から食事介助していると、Aさんが「食べる気にならん……」と一言。そこで筆者は、この場でできるポジショニングを考えました。足元にあった掛布団を丸く畳んで左肘下に置き、肩甲骨の下へ枕を入れてみると、Aさんはベッド柵から手を離し真っすぐ前を向いて自分で食事をし始め、「食べられるねー」とうれしそうに言ってくれました。

 

訪問看護の現場では、ベッド柵を握って姿勢のバランスを取っている利用者をよく見かけると思いますが、この状態では食欲や自力摂取に悪い影響を及ぼすことが少なくありません。そこで今回は、POTTプログラムにおけるベッド上の基本スキル*1を紹介します1-3)。

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市民とともに歩むナースたち(8)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

亀井 智子  かめい ともこ

聖路加国際大学看護学部 学部長

大学院看護学研究科 教授

 


多世代交流型デイプログラム 聖路加 和みの会

一人ひとりが輝くための世代間交流支援

 

わが国は世界でも類を見ないスピードで少子超高齢化が進展し、現在では総人口の約30%を65歳以上の高齢者が占めています1)。こうした社会の変化は、医療・看護のあり方を根本から見直す必要性を私たちに突きつけています。特に看護においては、病気等の治療だけでなく、高齢者が住み慣れた地域で、自らの生活を意味あるものと感じ、社会の一員として役割を持ち続けられるよう支える視点が求められます。

 

これまでの高齢者ケアでは、加齢に伴う心身・認知的な機能低下に焦点が当てられ、「支える側(若い世代・専門職)」「支えられる側(高齢者)」という一方向的な関係性が前提とされてきました。しかし、高齢者の語りに耳を傾けると、彼らは単に援助を受ける対象ではなく、人生経験の豊かさや深い知恵、社会に貢献したいという意欲を持つ主体的な存在であることがわかります。

 

そこで本稿では、筆者らがこれまで老年看護の実践・教育・研究を通じて重視してきた2つの概念である「互恵性」「世代継承性」を中心に、高齢者と子どもがともに輝く支援の実際を説明します。

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