病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。
川下 貴士 ●かわしも たかし
松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教
第10回 電話対応は難しい? ②不安の背景を考える
前回のあらすじ
利用者Bさんは、次回の訪問日等の確認で頻回に電話をかけてきます。対応に困ったこころさんはカワウソ先生を訪ねるものの、「まずはその人自身を見ることが大切」と言われ……?
Bさんにとっての不安の種
カワウソ お待たせしました。授業はやっぱり難しいですね……どうすれば学生たちは精神科看護に興味を持ってくれるんでしょう?
こころ 先生にも難しいことってあるんですね、意外です! ところで授業の間、Bさんが不安に思っていることを私なりに考えてみたんです。
Bさん/50代女性/強迫性障害/強迫観念・強迫行為あり
大学卒業後就職したものの、職場の人間関係に悩み、すぐに退職。その後は再就職することなく、現在まで母親と同居中。訪問看護は週1回だが、外来受診日や次回訪問日の確認のため、訪問看護師に頻回に電話をかけている。
私は頻回な電話ばかり気にして、Bさんが何を不安に思っているのか考えられていませんでした……。Bさんは外来受診日や次回の訪問日、買い物リストの確認でよく電話をかけてくるので、そこに具体的な理由があると思ったんですが。
カワウソ お! よく気づきましたね。私もそこにBさんが気にしてしまう、何かしらの不安があるんじゃないかと思ってました。
こころ それでよく思い返してみると、Bさんのケアをするときは、お母さんが必ず同じ部屋にいるんです。これがBさん宅のスタイルなのかとあまり深く考えてなかったのですが、もしかしたら何か、意味があるんでしょうか。
カワウソ 実は……私もそこが気になってました。あくまで私の推測に過ぎないのですが、例えば、Bさんが外来受診日を忘れたり、間違えて別のものを買ってきたりするとお母さんの機嫌が悪くなるなど、Bさんが自分の予定や買う物を気にしなければいけない理由にお母さんが関係しているんじゃないかと思ったんです。このことについて、何か情報はありますか?
こころ その辺りのことはまだ聞けていないです。でも確かに、お母さんの言葉や行動に何かしらのストレスを感じたことをきっかけに、Bさんは不安になって電話をかけてくるのかもしれないですね……。
カワウソ ただ、この話は想像でしかないので、Bさんやお母さんの思いを直接聞ける機会があるといいですね。例えばBさんが電話しているとき、近くにお母さんがいないのであれば、電話で聞いてみるのも一つの手かと。
こころ それはわからないのですが……近々、機会をみてBさんやお母さんに話を聞いてみます!
カワウソ もしかするとそこに、電話対応のヒントがあるかもしれませんね。こころさんのタイミングでBさんやお母さんの思いを聞いてみてください。今回はあまり詳しく説明はしませんが、話すときは、Bさんとお母さん、それぞれの思いを理解しようとすること。これだけは忘れないでくださいね。Bさんとお母さん、それぞれの思いを理解しようとすること。これだけは忘れないでくださいね。①
POINT①
話を聞くときは、Bさんとお母さんどちらか一方の味方にならないよう、気をつけましょう
こころ わかりました! そのように努力したいと思います!
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年6月号)