ナーシング・トゥデイ8月号特集「誌上コンサルテーションシリーズ③ 「つらくない」「痛くない」褥瘡ケア

NT1308表紙8月号の特集テーマは「「つらくない」「痛くない」褥瘡ケア」です。

がん医療で定着してきた緩和ケアの概念が、がん以外の患者のケアにも導入されるようになってきました。褥瘡ケアにおいても、「QOLを保障するケア」が注目され、その1つとして「疼痛緩和に配慮したケア」が挙げられています。特集では、褥瘡ケアに伴うつらさや痛みについて解説し、「痛みのアセスメント」「体圧分散ケア」「スキンケア」「ドレッシング材・テープの選択」「処置時に使用する薬剤」といった苦痛を緩和するための実践をご紹介します。後半の「誌上コンサルテーション」では、困難事例5題について解決策を模索します。

 

 

監修:祖父江正代

(江南厚生病院/皮膚・排泄ケア認定看護師/がん看護専門看護師)

 

「つらくない」「痛くない」褥瘡ケアにおけるナースの役割と看護の視点

祖父江正代

 

褥瘡ケアに伴う「痛み」「つらさ」の正体

小林陽子

(東京都健康長寿医療センター/皮膚・排泄ケア認定看護師)

 

 

 

実践とナースの役割

 

痛みのアセスメント

高木良重

(福西会病院/皮膚・排泄ケア認定看護師/がん看護専門看護師)

 

体圧分散ケア「病状説明と治療の選択」「家族支援」「療養の場の意思決定」を例に

祖父江正代

 

スキンケア

庭山由香

(杏林大学医学部付属病院/皮膚・排泄ケア認定看護師)

 

ドレッシング材・テープの選択

庭山由香

 

処置時に使用する薬剤

祖父江正代/石川眞一

(江南厚生病院緩和ケア科医師)

 

 

 

困難事例の誌上コンサルテーション

 

1 創に触れるだけで痛みのある患者へのケア 

丹波光子

(杏林大学医学部付属病院/皮膚・排泄ケア認定看護師)

2 薬剤がしみて痛いと訴える患者へのケア 

丹波光子

3 体圧分散マットレスによる不快感がある患者へのケア 

祖父江正代

 

4 痛みがあり、処置を拒否する患者へのケア 

高木良重

 

5 在宅でネグレクトが疑われた患者へのケア

小林陽子

NT2013年8月号連載【新看護学事典】紹介 共感疲労

NT2013年8月号の連載「楽しく読んじゃう 新★看護学事典」では、事典2「共感疲労」の解説を執筆してくださった武井麻子先生(日本赤十字看護大学教授)からエッセイをおよせいただきました。

 

ケア提供者の心理的疲弊

 

しばらく前からFacebookを利用していますが、最近、職場を辞めたという若い看護師の投稿が載っていました。どうやら勤務中に急変した患者を救えなかったことが、きっかけのようです。申し訳ないという気持ちが綿々と綴られていました。

 

こうした現象は、よく「バーンアウト」という言葉で語られますが、彼女はまだ卒業して3年です。燃え尽きたというにはあまりに早すぎる気がします。むしろ、「共感疲労」として捉えるべきなのでしょう。

 

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NT2013年8月号連載【退院支援の仕組みづくりと実践事例】紹介

NT1308表紙ナースたちが退院支援の仕組みをつくり、うまくいっている病院の実践事例を1つ取り上げ、「意思決定支援」と「自律支援」を軸に病棟ナースと在宅ナースがそれぞれの実践を振り返ります。加えて管理者から仕組みづくりの経緯とその内容をうかがいます。

 

 

 

 

 

[監修]

宇都宮 宏子 (在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)

[筆 者]

堀尾 素子(精神療養病棟看護師)

角間 広美(訪問看護ステーション レインボウはたしょう)

力石 泉(看護部長)

 

今月の病院 

豊郷病院

 

事例紹介

 

Aさん(70代/女性)

既往歴:レビー小体型認知症

 

社交的で明るい性格。お嬢様として育ち、高校卒業後21歳で結婚。2児をもうけ、しつけに厳しい厳格な母親・専業主婦として過ごす。55歳で夫が他界した。

 

長男は40代独身で大学卒業後大手企業に就職し、現在他県に赴任中。50代の長女はてんかん、知的障害があり作業所に通所中。長女と二人暮らしをしていた。

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NT2013年6月号連載【退院支援の仕組みづくりと実践事例】紹介

NT2803-表紙下ナースたちが退院支援の仕組みをつくり、うまくいっている病院の実践事例を1つ取り上げ、「意思決定支援」と「自律支援」*)を軸に病棟ナースと在宅ナースがそれぞれの実践を振り返ります。加えて管理者から仕組みづくりの経緯とその内容をうかがいます。

 

 

 

 

 

[監修]

宇都宮 宏子 (在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)

[筆 者]

田中 三奈子(退院調整看護師)

藤本 佳代(訪問看護師)

上山 早苗(看護部長)

 

今月の病院 

萩原中央病院

 

 

事例紹介

 

Aさん(85歳/女性)

 

Aさんは、夫(86歳)と次男の3人暮らし。肝硬変末期で腹水貯留による体動困難と倦怠感が強く、長男が住む近県の病院に50日間入院していたが、「夫が毎日面会できる自宅近くの病院がいい」と当院に転院した。長男夫婦は共働きだった。

 

入院前は何とか自立した生活を送っていたが、病状は日々悪化し、転院時にはポータブルトイレへの移乗がやっとできる状態だった。

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NT2013年6月号連載【新看護学事典】紹介 清水耕一

 

NT2013年6月号の連載「楽しく読んじゃう 新★看護学事典」では、事典2で「清水耕一」の解説を執筆してくださった鷹野朋実先生(日本赤十字看護大学精神保健看護学講師)からエッセイをおよせいただきました。

 

精神科看護の礎

 

私が東京都立松沢病院という精神科病院の看護師だったころ、院内図書室で「至誠の人 清水耕一君」と題された、明治から昭和初期に松沢病院(前身の巣鴨病院も含む)で勤務していたある看護人の生涯を綴った冊子を見つけました。これが、私と清水耕一との出会いです。清水には、日本赤十字社の看護人として戦時救護に従事したり、多数の読者に支持された著書『新撰看護學』の執筆など、さまざまな業績があります。

 

清水は、松沢病院の医療・看護の惨憺たる状況を改善しようと、精神科医の呉秀三が病院を大改革していたころの看護長です。呉は、清水に絶大な信頼を寄せていたそうです。これを知った時、18世紀、フランスの精神科病院で“鎖からの解放”を行った精神科医ピネルの傍らで、彼の改革を支えた男性看護人ピュサンを想起しました。清水も、呉の病院改革にかかわっていたかもしれません。病院が巣鴨から移転した直後に以下のようなことがあったと、そこに居合わせた医師が後に述懐しています。

 

新しい松沢病院の塀は、呉の“病院と周囲の境界は簡易に”という主張から、従来の頑強な塀ではなく大部分が生け垣と簡素になりました。そこで清水が「これでは私たちは仕事ができない」と呉に言ったのです。「この塀では患者が簡単に離院してしまい、大変だ」ということなのでしょう。すると呉は、「病人の囲いは看護人の目で行いなさい、垣根に頼るからいけない」と答えたそうです。(続く)

 

 

★清水耕一

日本赤十字社中央病院救護看護人養成所1期生。精神科看護に熱い情熱を持ち、明治から昭和初期にかけ、東京府巣鴨病院(後の東京都立松沢病院)に勤務(看護学事典第2版より)。