施設の機能・特性に応じたキャリア開発ラダーの構築に役立つモデルプログラムと活用のヒント

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原 玲子さん
(はら れいこ)
宮城大学看護学部教授
盛岡赤十字看護専門学校卒業後、
仙台赤十字病院に勤務する。
手術室、整形外科病棟、外来の看護師長、
教育担当の看護副部長として看護管理の実践を行い、
2005年日本赤十字社幹部看護師研修センター教務部長として認定看護管理者教育に携わる。
日本赤十字社幹部看護婦研修所修了。
慶應義塾大学文学部卒業。
山形大学大学院医学系研究科看護学専攻修士課程修了。
2007年宮城大学看護学部准教授。
2010年より現職

 

 

キャリア開発ラダーキャリア開発ラダーの構築は、「導入の目的」と「育成したいナース像」を明確にするところから始まります。新刊『目標管理とリンクした看護職キャリア開発ラダーのつくり方・活かし方』では、ラダー構築に活用できるモデルプログラムを示しながら、導入のプロセスと運用のヒントを解説します。著者の原玲子氏に、本書の特徴と効果的な活用法などについてうかがいました。

 

 

 

――本書のご執筆のきっかけをお教えください。
現在、臨床現場では、看護職のキャリア開発ラダーのニーズが高いと感じています。「どのように導入し、運営すればよいでしょうか」というご相談を受けることが多く、準備・導入・運営に関するわかりやすい「ガイドブック」があればと思ったことが、執筆のきっかけです。

 

――次に、本書で紹介するモデルプログラムの特徴と効果的な活用法についてお教えください。
ラダーシステムを導入する際のつまずきの1つに、「何を準備するとよいのかわからない」ということがあります。本書は、システム導入に必要なものをプロセスに沿って整理しており、紹介するモデルは、ご自分の施設に適用することが可能です。また、導入時の最も大きな壁が「臨床実践能力の評価表」の作成だと思われます。本書の「評価表」モデルには、かなりのエネルギーを注ぎ込みました。ぜひご活用いただき、施設の特性に合うように、適宜、修正していただければ幸いです。

 

――第5章に「目標管理とキャリア開発は表裏一体の関係」とありますが、目標管理とのリンクもモデルプログラム(ラダー)の特色ですね。
目標管理とキャリア開発は表裏一体で相互作用関係にありますが、それを具体的に組み込むには、「自己目標」と「キャリア発達」の関係を理解することがポイントです。本書では、「自己目標」と「組織目標」、そして「個人のキャリア発達」の三者関係をつなぐように、研修や認定課題等をモデルとして示しています。

 

――第8章では、ラダー「レベルⅠ」にあたる新人ナースの「社会人基礎力」を育む研修のポイントも具体的に解説されていますね。
新人ナースは国家試験に受かって専門知識を獲得しているものの、それを実践に移すためには、知識・技術と実践をつなぐ能力が必要です。それが社会人基礎力です。新人には、「アセスメント力が低い」「技術が未熟」等の看護に関する問題以外に、「電話をかける・受けるのが苦手」「主治医への報告に緊張する傾向」「どうすればよいか教えてほしいという指示待ち姿勢」等の特徴があります。研修では「基本技術」「医療安全」「感染対策」等が中心ですが、社会人基礎力の育成も不可欠と思い、解説しました。

 

――モデルプログラムの原型は、NTT東日本東北病院看護部のご協力を得て開発し、2012年に同院に導入されたそうですが、導入後どのような変化が見られたのでしょうか。
鈴木郁子看護部長からは、「該当するレベルに到達している看護師のラダー申請率は100%」という驚きの数字をうかがいました。その理由は、「各レベルの到達目標を見据え、実践を積み重ねることがキャリア形成であるという理解ができてきたからだと思うのです」とのことでした。また、「教育専任の草野幸子看護長が、各レベルの評価票を確認しながら職員個々の成長をよく見ていて、『このナースはこの経験が必要なので支援してください』等、看護長らに声をかけていることも影響している」とも分析されています。さらに、「研修ポイント制の導入により、研修参加率が上がったり、キャリアファイルが丁寧に書かれるようになったり、よい職場風土になってきたと思います」と、お話しくださいました。
同院は、199床、看護師数176人です。規模の大きいほうが研修体制は充実しているという報告がありますが、規模に関係なく、取り組む姿勢が重要であると実感しました。

ラダー導入を考えていれば、「できるか、できないか」ではなく、ぜひ取り組んでください。本書が、そのお手伝いをできれば幸いです。

 

「看護」2015年4月号「SPECIAL INTERVIEW」より –

 

 

目標管理とリンクした
看護職キャリア開発ラダーのつくり方・活かし方