経験から学ぶ看護師を育成するリフレクション支援のわざとコツ(1)



新連載(1)

経験から学ぶ力を育むための
リフレクション支援のヒント

 

東 めぐみ

 

 

経験から学ぶ看護師を育成する研究会では、リフレクションを推進するための支援について検討を深めてきました。本連載では、支援者が自ら自己の支援を内省することで、次の支援のための教訓を見いだすという経験学習のサイクルの実際と、他者のリフレクション支援から学びを得て、それをどのように自己のリフレクション支援に生かしているかをご紹介します。

 

看護師の語りとリフレクション支援
近年、リフレクションは多くの医療機関や教育機関で推進されるようになりました。これを推進する指導的立場にある皆さま(以下:支援者)から、「リフレクション支援をどう行ったらいいのか悩んでいる」「支援者の育成が課題である」との声が多く聞かれ、支援者の育成について検討してきました。

 

また、支援者の悩みに耳を傾けていると、「看護師の思いを引き出すことが難しい」という言葉をよく聞きます。リフレクションでは看護実践を語り、その語りから次の実践に役に立つエピソードを見いだし、行われたケアの意味を探求していきます。そのときに必要なのが、看護師が自分の体験を物語るという行為です。支援者は看護師に語ってもらいたいという願いから、「思いを引き出す」ことを役割と考えています。

 

私たちは指導的立場に立つと「教える」役割が学習支援であると長く教わってきました。そのことは大切なことでありますが、教える役割だけではなく、学習者の学びを支えることも行っています。三輪は自己決定や経験を「引き出す」役割を持つ学習支援者が、ファシリテーターであると述べています。リフレクションの支援者はすでにこの新たな支援のあり方に気がつき、実践しているのだと思います。

しかし、多くの支援者は「引き出す」支援方法についての教育は受けていません。ショーンは、自分の経験では対応できないことが起こるときには行き詰まりを感じると述べていますが、このときの支援者にも同じことが起きているのだと思います。看護師が物語るためには、言語化に至っていない思いや過去の体験を語ってもらう必要があるため、支援者は何をどのように語ってもらうか学ぶ必要があるでしょう。

看護師が自己の実践を物語るとき、この人にだったら、あるいはこの場であれば話してもよいという話し手としての判断や、何を話すかという選択も行われます。そのときに必要なのが、他者による問いかけや問い直しです。「看護師の思いを引き出すことが難しい」という言葉は、問いかけや問い直しについて考えていくことの重要性を示唆しているとも考えます。「対話」によって紡ぎ出される語りは看護師が行っている「わざ」の言語化でもあり、問いかけ、聞いてくれる支援者や仲間の存在によって理解されるときに深い共鳴が起こるのではないでしょうか。

 

→続きは本誌で(看護2024年1月号)