映画と、生きるということ(1)


新連載(No.1)

何かにはなれなくても、
私たちには生きる意味がある

 

渡辺 裕子

 


渡辺 裕子 NPO法人 日本家族関係・人間関係サポート協会 理事長
長年、家族看護の発展に注力し、近年は「かぞくのがっこう」の開講など市民にも家族看護のエッセンスを伝え、広げている。趣味は鉛筆デッサン。

 


 

刑期を終え、うつろな表情で小さなどら焼き屋を営む千太郎に、徳江が働かせてほしいと声をかけたのは桜が満開のころ。徳江は、千太郎にあんの炊き方を教え、店は大繁盛。しかし、徳江のハンセン病による指の変形を見とがめた客からうわさが広がり、客足は遠のいていく。徳江は店を辞め、千太郎は徳江を世間から守れなかった自分の非力さに打ちのめされる。

 

秋、徳江から手紙が届き、再会を果たした矢先、徳江は帰らぬ人となる。そうして迎えた春、徳江の遺言ともなった「自分のどら焼き」を完成させた千太郎は、新たな人生を踏み出していく。

 

小豆と向き合う
とてもやさしい気持ちになれる映画です。焦りや不安、いら立ちなど、生きていれば誰もが抱える心の“カサつき”を癒やしてくれる作品です。

 

映画の舞台は、どこにでもあるような街角の小さなどら焼き屋。平凡な日常の風景が淡々と流れていく中、ストーリーが進行していきます。

 

 

 

『あん』
2015年/日本/113分
監督 河瀨直美 原作 ドリアン助川
主演 樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、ほか
©2015映画『あん』製作委員会/COMME DES CINEMAS/TWENTY TWENTY VISION/ZDF-ARTE

 

樹木希林さんの最後の単独主演映画。ドリアン助川の同名小説「あん」を、各国の映画祭で多数の受賞歴のある監督・河瀨直美さんが映画化。

季節は春。桜の咲き乱れる公園に面したどら焼き屋「どら春」でつらい過去を背負う千太郎は雇われ店長を続けていた。ある日、この店に徳江という手の不自由な老婆が訪れ、アルバイトに雇ってくれと懇願する。
Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT等で配信中。

 

 

→続きは本誌で(看護2024年1月号)