アンガーマネジメント(32)

怒りの感情と上手に付き合う手法“アンガーマネジメント”を看護職が医療・介護現場で生かすための、基礎知識と看護実践への活用のポイントを解説します。

 

 


怒りをコントロールして

パワーハラスメントを防ぐ

 

 

光前 麻由美●みつまえ まゆみ

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会

アンガーマネジメントコンサルタント

独立行政法人国立病院機構神奈川病院 看護師

 

 

ここ数年、ハラスメントへの関心が高まっています。2020年6月の労働施策総合推進法の改正により、パワーハラスメント防止措置が事業主の責務となりました。職場でのパワーハラスメント(パワハラ)とは、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①〜③までの要素を全て満たすもの」とされています。また、日本看護協会でも、看護職の働き方改革の推進として「職場のハラスメント対策」を取り上げています。

 

 

看護職は、上司や同僚からだけでなく、他職種や、患者・利用者とその家族からもハラスメントを受ける可能性があります。特に、生命の危機的状態にある場面では、時に相手の感情が高ぶり、厳しい言葉を投げかけられたり大声で怒鳴られたりすることもあるでしょう。緊急時であれば「穏やかに話してください」などと言っている場合ではなく強い口調で対応せざるを得ないこともありますが、それが業務上、適切な言動かどうかは考える必要があります。必要である、あるいはよかれと思ってのことであっても、行き過ぎた言動は関係性を悪化させるため効果的な対応とはいえず、むしろハラスメントに当たる場合もあります。

 

そこで今回は、自身の言動がパワハラだと受け取られることを防ぐ、つまり「自身のパワハラ防止」を目的としたアンガーマネジメントの活用法を紹介します。

 

なぜ、自身のパワハラ防止対策に

アンガーマネジメントが有効か

 

パワハラは、なぜなくならないのでしょうか。それは、パワハラに対する知識・認識が不十分だからです。中には「自分が若いころは厳しく指導をされてきた。だから部下に厳しくするのは当然」と思っている人もいます。パワハラはいけないことで、どう取り組んでいかなければならないのかを知っていたとしても、気持ちをコントロールできないために結果としてパワハラになってしまうケースもあります。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2022年3月号)