地域ケアの今(31)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

感染症との付き合い方

文:鳥海房枝

 

この誌面が読者の皆さまの目に触れるころは桜花爛漫の時期で、感染症の話題は下火になっていることでしょう。例年、高齢者ケア施設では夏場になると食中毒の発生、冬場になるとインフルエンザやノロウイルスの集団感染への対策が話題に上り、万が一これらが起こると、事件として多くのメディアに取り上げられます。

 

筆者がセミナーや第三者評価で訪れる高齢者ケア施設の多くは、感染対策として玄関に手洗い場や手指消毒スプレーを備えています。今や手指消毒スプレーはホテルや役所、スーパーの出入り口にも置かれていますが、これはいつごろからなのでしょう。さらに、「ご自由にどうぞ」と書かれたプレートの脇にマスクを置いている高齢者ケア施設も珍しくありません。しかも多くの医療機関とは違い無料です。また、施設によっては玄関を入るとそのままトイレの洗面所へ誘導され、そこで消毒薬を使ってうがいをしてからでないと入所者のいる空間には入れてもらえません。このように多くの“関所”が設けられているのです。

 

本号では、日ごろから「暮らしの場」を標榜している高齢者ケア施設の感染対策を振り返ってみたいと思います。

 

 

肝心なのは
全職員が確実に対応できること

厚生労働省の「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 平成25年3月」では、感染症への対策の柱として「感染源の排除」「感染経路の遮断」「宿主(ヒト)の抵抗力の向上」を挙げています。そして、まず重要なのが感染経路を遮断するために、感染源を「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」ことです。職員が持ち込まない・持ち出さないためには、職場では仕事着を着用し、それを家に持ち帰らず、施設内で洗濯できる体制を整えておくことが必要になります。拡げないためには、全職員が嘔吐物処理のキットを使えるようにしておき、使用する手袋などの物品は十分な量を備えておくことが肝要です。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年4月号)