地域ケアの今⑰

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

高齢者ケア施設における
業務の合理化の方向性を考える

文:鳥海房枝

 

平成30年度の介護報酬改定に向けた議論を耳にするようになりました。この中で介護現場の人手不足に絡めて記録物の膨大さも取り上げられ、その大幅削減をめざしているそうです。もし、それが実現すれば極めて歓迎すべきことです。

 

私が第三者評価で現場を訪問する際、使い道があいまいなまま何枚もの記録物にタイトルをつけ、それぞれに利用者の名前を書いて“分散管理”している実態を見ることが多くあります。なぜ記録物が増えたのかを職員に尋ねると、「行政指導(監査)で指摘された」という受け身な回答が多いのが事実です。さらに本当にそのように指摘されたのかを聞くと、「これまでの書類を見直さないまま、指摘されたことに応えていったら書類が増えた」という結果にいきつきます。
また、介護保険の加算要件も書類の増加を加速させているように感じます。例えば、「看取り介護加算」はそのよい例でしょう。

 

 

加算の申請のためだけの書類作成は必要?

 

日本老年医学会は「立場表明2012」で、終末期の定義を「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」としています。残された命の長さの予測は困難なため、ここでは具体的な期間は示していません。ただ、悪性新生物や心臓疾患など治療効果の見込める疾病が直接の原因となって逝く場合と、老衰や認知症で逝く場合とでは、要介護状態から死に至るまでのスピードは異なります。高齢者ケア施設が看取りの対象とする、いわゆる認知症を含む老衰では、たとえ医師が看取り期との判断をして家族に説明した後でも、なかなかそのときが来ない例は珍しくありません。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2017年2月号)