トシコとヒロミの往復書簡 第21回

本連載では、聖路加国際大学名誉教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

起業

文:井部俊子

 

ご無沙汰しています。といっても、毎月1回はこの往復書簡であなたと往来していることになるのですが。今回は私の近況報告をしたいと思います。

 

私は、2017年3月末で聖路加国際大学を退職いたしました。大学には14年間在籍していました。最初の1年間はただの教授でした。2年目から3期(12年間)、学長をいたしました。学長在任中に65歳を迎えたので、正確にいうと、前半は学長・教授でしたが、後半は学長専任でした。最終年の1年間は特任教授でした。

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地域ケアの今(21)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

介護現場ではやりの言葉遣い

文:鳥海房枝

 

医療現場で患者に「様」をつけて呼称することについての議論が始まったのは、「厚生白書」で医療がサービス業であると明言された1995年ごろからです。サービス業なのだから患者をお客様と捉え「様」をつけるべきという考え方がありました。そして2001年、「国立病院・療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」で「患者の呼称の際、原則として『さま』を付すことが望ましい」という内容が示され、多くの病院がそのようにしました。つまり、国が患者を様づけで呼ぶよう求め、全国に広がっていったのです。当時、この状況に私は強い違和感を覚え、東京都看護協会の地区支部役員会でそれを話題にしました。すると、ある公立病院の師長は「患者に丁寧な対応をするようになるので意味がある」と言いました。

 

その後、現場で働く医療関係者はもとより、当事者である患者にも「様」呼称について調査が行われました。その中で大変興味を引かれたのが、様づけで呼ばれることに対して患者の肯定的な回答率が低く、「違和感がある」「よそよそしい」「日本語としておかしい」といった否定的な意見が多くあったことです。そして現在は、あえて「様」から「さん」に戻した医療機関、直接患者に接するスタッフは「さん」、窓口対応は「様」と使い分けている医療機関、一律に「様」呼称している医療機関などに分かれています。

精神看護キーワード 多職種間で理解を共有するために知っておきたい119用語

 

1975年千葉大学教育学部特別教科看護教員養成課程卒業、1984年ハワイ大学看護学部修士課程(CNSコース)修了(看護学修士)。東京都民生局、小林病院(看護師)の臨床経験の後、東京女子医科大学看護短期大学を経て、杏林大学保健学部看護学科教授、三重県立看護大学・大学院教授、地域交流研究センター・センター長、共立女子短期大学看護学科学科長、東京慈恵会医科大学看護学科・大学院教授、山陽学園大学大学院看護学研究科精神看護学(CNSコース)教授を歴任して2015年より心の相談室荻窪室長、有馬高原病院ナースサイエンティスト。2017年より奈良学園大学保健医療学部看護学科教授。著書に「精神症状のアセスメントとケアプラン」(メヂカルフレンド社)、「精神看護学Ⅰ・Ⅱ 第5版」(ヌーベルヒロカワ)など多数。

このたび当社より刊行しました「精神看護キーワード」は、保健師、病棟看護師、訪問看護師、精神保健福祉士、介護福祉士、作業療法士、薬剤師、ケースワーカー、看護学生……など、誰もが活用できる用語解説書です。総編集者の川野雅資さんに本書のねらいを述べていただきました。

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近代ホスピス運動の創始者 シシリー・ソンダースの生涯

がん末期患者が激しい痛みに苛まれることなく、最期のときまで人間らしく穏やかに過ごせるための休憩所をつくりたいと願い、セント・クリストファー・ホスピスを設立したシシリー・ソンダースの幼年期から晩年までを綴った1984年版書籍に、亡くなるまでの約20年の記述を追加した『シシリー・ソンダース 増補新装版』が好評発売中です。

 

強い意志と、死にゆく人へのあつい思いやり、そして天性のリーダーシップを持つ類まれな1人の女性の生涯の一部を紹介します。

 

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地域ケアの今⑳

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

コミュニティとは

文:上野まり

 

先日、ある研修会でワールド・カフェとやらに参加する機会がありました。数人の見知らぬ人たちと輪になって、1つのお題についてあれこれと思いを語り、時間になると次は別の人たちと輪になってまたそのお題について語り合い、最後は元いた輪に戻って再度、話し合うというユニークな座談会のようなものでした。このときのお題は「今後、地域の住民の暮らしを支えるために、どんなケアが求められているのか」。その中で、ある人が投げかけた1つの問いに考えさせられました。それは「そもそも自分にとってコミュニティとはなんだろう?」というものでした。
本誌のタイトルにもあり、地域看護や在宅看護、被災地支援などで頻繁に耳にする言葉ですが、あらためて考えたことがなかったため、その問いは私にとって妙に新鮮に響きました。そこで、今回は「コミュニティ」について考えてみようと思います。

多種多様なコミュニティ

辞書によるとコミュニティとは、「①人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。共同体。②インターネット上で、共通の関心をもちメッセージのやりとりを行う人々の集まり。③ アメリカの社会学者マッキーバー(R. M. MacIver)が定式化した社会類型の一。血縁・地縁など自然的結合により共同生活を営む社会集団。→ アソシエーション」(大辞林第三版,三省堂.)とあります。 なるほど、さまざまな意味を包含している言葉なのだと認識し直しました。
人が社会の中で生きていく上で、どの共同体にも属さないということは、ほぼあり得ないと思います。人は生まれた直後から「家族」という最小単位の血縁集団に属しています。たとえ生後すぐに産みの母や父と別れたとしても、なんらかの生活共同体に属さなければ、生きていくことはできないでしょう。
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