基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(20)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

事業承継における支援施策

 

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

事業承継のプロセスには、法的な手続きや経済的な負担、さらには人的な調整など、さまざまな課題が伴います。日本では、これらを解決し、事業を円滑に承継するための支援策が公的に用意されています。

 

経済産業省中小企業庁では、事業が途絶えることなく継続できるよう、補助金や助成金、税制優遇といった多様な支援策を提供しており、訪問看護ステーションのような中小規模の事業者にとって、大きな助けとなるものです。2024年末に発表された令和6年度補正予算案では、事業承継・M&A補助金をはじめとする関連予算が大幅に増額されました。このことから、経済産業省が事業承継の重要性を強く認識し、積極的に支援を行っていることがうかがえます。経営者は事業承継を進める中で直面するさまざまな課題や問題を一人で抱え込まず、積極的に活用していくことが重要です。

 

また、訪問看護事業の承継は、地域の利用者にも大きな影響を与える重要な課題です。事業運営が途絶えずに継続されることで、利用者はそれまでと変わらず安心してサービスを受けられます。

 

今回は、経済産業省中小企業庁が提供する支援策とその活用の仕方を中心に紹介します。

 

事業承継の相談・伴走

 

2021年4月、全国47都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されました。同支援センターでは事業承継計画の策定支援を通じて、スムーズに事業承継のプロセスを進めるためのアドバイスを受けることができます。また、M&Aマッチングの支援も行っており、事業を引き継ぎたい企業と引き受けたい企業を結び付け、適切な相手を見つけるサポートも提供しています。従業員への事業の引き継ぎに際しても、具体的なアドバイスを受けられるのが特徴です。

 

以前、筆者が遠方に住む経営者から事業承継の相談を受けた際に地元の事業承継支援センターを紹介しました。しかし、当時まだ設立されたばかりだったためか、「医療に関する事業承継の経験がない」との理由で相談を断られ、別のM&A仲介事業者を紹介されたというケースがありました。

 

支援センターの設置からまだ年数が経ってない現在では、そうした課題があることも考慮しつつ、上手に活用する必要があるでしょう。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2025年3月号)