NFocus  社会的養護経験者を孤立させない仕組みづくり

 

 

社会的養護経験者を孤立させない仕組みづくり

 

宮地 菜穂子 ● みやち なおこ

同朋大学社会福祉学部 准教授

 

[略歴]

大学卒業後、児童養護施設にて児童指導員として勤務する中で社会的養護現場の諸問題を認識し、退職後に進学。大学院修了後は NPO 法人アスペ・エルデの会事務局長、中京大学非常勤講師等を経て現職。博士(社会学)・社会福祉士・保育士・専門社会調査士。専門は社会的養護現場における子どもの発達支援・子ども家庭福祉学。

 

 

2020年度に厚生労働省が実施した社会的養護経験者を対象とした初の全国調査により、児童養護施設等からの退所後、その多くが支援者とのつながりが途切れ、生活に困難を抱えている実態が明らかになりました。これらの課題解決のため、社会的養護経験者の社会的孤立を防ぎ、自立を支える仕組みづくりに取り組むプロジェクトについて報告します。

 

 

はじめに

 

児童相談所における児童虐待相談対応件数は2020年度に20万件を突破し、その後も過去最多の状況が続いています。2021年度の児童虐待相談対応の内訳は、相談対応件数20万7,660件に対して、一時保護2万7,310件、施設入所等4,421件となっており、相談対応件数のわずか約2%が保護されている現況にあります。また現在、里親・ファミリーホームへ委託、あるいは乳児院・児童養護施設などの施設へ措置され、実親と離れて生活している子どもは約4万2,000人います。

 

このように国内には、保護者のいない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行う「社会的養護」という仕組みがあり、「こどもの最善の利益のために」と「社会全体でこどもを育む」を理念として行われています。

 

児童福祉法の対象となる「児童」は、満18歳に満たない者ですが、里親の委託および特定の施設への入所措置については満20歳まで延長でき、大学進学の際等は措置解除後、22歳年度末までの支援の継続もできます。そのため、児童養護施設等や里親家庭等で暮らす子どもたちの多くは、18~22歳の年齢で、施設や里親家庭を離れて社会で自立生活を始める、あるいは実親家庭に戻って生活することになります。

 

このように児童養護施設等を退所等した者(以下:社会的養護経験者)は、ケアから離れた者ということで、ケアリーバー(care leaver)と呼ばれることもありますが、本稿では社会的養護経験者という表現を使用します。

 

→続きは本誌で(看護2024年11月号)