生きるということ

 

自分のやるべきことをやる

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尾身 茂[医師・公益財団法人結核予防会理事長]

 

1949年生まれ。東京都中野区出身。1972年、慶應義塾大学法学部を経て自治医科大学に入学(1期生)。同大卒業後、伊豆七島を中心に地域医療に従事。1990年からWHO西太平洋地域事務局、1999年から同事務局長を務めた。2014年に独立行政法人地域医療機能推進機構理事長に、2022年に公益財団法人結核予防会理事長に就任。2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード構成員、新型コロナウイルス感染症対策分科会長も務めた。

 

われわれの生命は与えられるものです。自分だけで生まれ、自分で好きなようにつくってきたわけではありません。もちろん、生命には皆価値がありますが、両親からの遺伝子や環境など、それぞれが与えられる個性は違います。それぞれの個性に応じて悔いのないように生きるということが大事です。

 

困難がない人生はありません。われわれは子どものころから、家族や社会からさまざまなことを求められ、つまり課題を与えられながら生命を少しずつつくり上げていきます。そして、研究者、工場で働く人、教師、新聞記者、さまざまな職業に就き、「いろいろ大変だったけれど、十分生きてやることをやった」と思って死ぬために、さまざま困難と向き合い、与えられた生命をどうやって開花させたらよいかを考えながら生きています。
そのために自分や家族の幸福を求めることは必要ですが、それだけでは十分ではありません。人間は社会とどこかでつながり、他の人に貢献していると思えなければ充実感を持てない生き物だからです。

 

続きは本誌で(コミュニティケア2023年8月号)(看護2023年8月号)