職員が辞めない組織をつくる!⑤

訪問看護ステーションや高齢者ケア施設の管理者が抱える課題を浮き彫りにし、どうしたら職員が辞めない組織づくりができるのかについて指南します。

 

 

組織を“壊す”
否定の言葉

 

横山 郁子

よこやま いくこ

株式会社パーソナル・ナース 代表取締役/訪問看護塾 塾長
神奈川県訪問看護ステーション協議会 会長

 

 

 

言葉の持つ「力」

 

離職率が高いステーションにはいくつか特徴がありますが、その中の1つに「管理者が否定的な言葉を頻繁に使用する」ことが挙げられます。否定的な言葉は相手を傷つけるだけでなく、管理者にそうした言葉を投げかけられた職員は“否定されないための行動”をとるようになります。その結果、職員は管理者の意図しない行動をとったり萎縮したりするようになり、最終的に退職につながることがあります。それを避けるためにも、管理者はコミュニケーションのとり方に留意する必要があります。

 

 

「人の感情は他者に移る」と言われることがあります。これを、心理学では情動感染といいます。例えば、笑っている赤ちゃんがいるとまわりの人も笑顔になり、逆にピリピリしている上司がいると部下もピリピリしてしまうことがあります。それを引き起こしているのは、「ミラーニューロン」という脳内の神経細胞。他人の考えをより深く理解するため、模倣により他者から技術を習得するための働きを持っているのです。その中でもより伝わりやすいのは負の感情と言われています。そのため、ストレスを抱えることの多い管理者が職員に対して否定的な言動を繰り返していると、それが職員にも伝わり、職場全体の雰囲気が悪くなっていくのです。

 

管理者の言動は職場の雰囲気に表れる

 

筆者がコンサルテーションをしているクライアントのステーションに入室すると、最初に職員とあいさつを交わすだけで管理者が普段から否定的な言葉を使っているのかどうかを察することができます。管理者が否定的な言葉を使っていないステーションの職員とは明るくあいさつをし合うことができる一方、否定的な言葉による負の連鎖が生じているステーションでは緊張感が漂いピリピリした雰囲気が伝わってきます。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2022年12月号