SPECIAL INTERVIEW 『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』刊行

岡部 美保さん

(おかべ・みほ)

 

在宅創傷 スキンケアステーション代表

皮膚・排泄ケア認定看護師

 

1995年前橋赤十字病院退職、群馬県看護協会訪問看護ステーション入職。2015年高崎健康福祉大学訪問看護ステーション入職。2016年管理者に就任。2021年退職し、在宅創傷 スキンケアステーションを開設、現在に至る。2016年高崎健康福祉大学大学院保健医療学研究科看護学専攻修士課程修了

 

健やかな皮膚は、日々のスキンケアが基本です。療養者の健やかな皮膚を守り、笑顔で暮らしてもらいたい。その思いが込もった『在宅療養者のスキンケア』が発刊されました。皮膚の基本知識(エビデンス)をおさえながら、ドライスキンから褥瘡までのアセスメントと予防的ケアを豊富な実践知を基に丁寧に解説した、本書の読みどころをうかがいました。

 

 

■スキンケアは看護の質が問われるケア

 

——本書は、皮膚・排泄ケア認定看護師の活動で長年積み重ねられた実践知をまとめた書籍ですね。

 

これまで在宅看護の現場で、重症・難治化する創傷を有する療養者のケアに悩む訪問看護師さんたちとともにケアを実践してきました。その中で、日々の継続的なスキンケアが健やかな皮膚を維持するための基本だと実感しました。スキンケアは私たちの看護の質が問われるケアであるとも感じています。

 

現在行っている訪問看護事業所へのコンサルテーションでも、主な相談は再発するスキントラブルや創傷ケアです。日々のスキンケアの重要性を再認識していただき、スキントラブルの発生や再発の予防につながるようにと願い、編集・執筆しました。

 

——前半は「基本の知識:在宅療養者の皮膚の理解」後半は「実践の知識:アセスメントと予防的スキンケア」の2部構成ですね。

 

「基本の知識」はスキントラブルを理解するために、皮膚の構造や機能・栄養・創傷について、在宅医療・看護を牽引されている先生方に、エビデンスを示しながら解説していただきました。

 

「実践の知識」は、第1章でスキンケアの基本をおさえ、第2章では誰にでも起こるスキントラブルとしてドライスキン・浸軟・浮腫・真菌感染症・低温熱傷を、第3章ではハイリスクな療養者のスキントラブルとして失禁関連皮膚炎・スキン-テア・褥瘡を取り上げ、予防的ケアの実践にご活用いただけるようにまとめました。

 

——「実践の知識」には、各章の冒頭に「第〇章の読み方」を示されていますね。

 

章の冒頭「読み方」では、その章でお伝えしたいことの要点とともに、スキントラブル・創傷が次々と関連しながら発生することが一目でわかる「関連図」(図表1)をつけました。本書は、どの項目・どの章からでも読んでいただけるように編集しましたが、他の項目・章との発生・予防の関連も意識していただけたらと思います。

 

図表1 実践の知識第2章の「関連図」

 

 

——「実践の知識」の第1章には、療養者ご本人やご家族にも参考になる情報がたくさんありますね。

 

洗浄・保湿・保護の手技や医療用テープの貼り方・剥がし方は、1〜2分程の動画を作成しました。動画は、日々のスキンケアを行うご本人やご家族にもご覧いただくことで、正しいスキンケア方法の理解を深めていただけると思います。

 

また、スキンケア用品は、薬局・薬店や通販で購入できる製品を紹介し、その特徴を「巻末資料」にまとめました。購入の際の参考にしてください。

 

■「予防のアセスメント」で多面的にチェック

 

——「実践の知識」の第2・3章で提示された「予防のアセスメント」や「予防的ケア」は、実践的な内容ですね。

 

在宅看護の現場では、日々のスキンケアに加え、予防的観点から療養者を多面的にアセスメントする視点が必要となります。そこで、「予防のアセスメント」を皮膚/全身状態/生活環境/人・ライフスタイル・価値観の4つの視点に分類しました(図表2)。ここに記載されている内容は、スキントラブルを防ぐための観察・評価のポイントです。チェックがついた箇所は、スキントラブル発生のリスクポイントとなりますので、注意や見直しが必要です。また、症候・疾患に応じた「予防的ケア」や、日頃の訪問看護師さんとの質疑応答の場面を、コラムやワンポイントとしてご紹介しています。

 

図表2 4つの視点からの「予防のアセスメント」

 

「第3章 ハイリスクな療養者のスキントラブル」では、さらに「発生後のケア」として、創傷の評価方法や発生時のスキンケア、そして地域の多職種との連携・協働にもふれました。地域での専門職を交えた支援の輪が広がることを願っています。

 

——最後に、病院の看護職へメッセージを。

 

スキンケアは、病院でも在宅でも、高齢者でも小児でも、毎日継続して行うことによって、スキントラブルを予防することができます。日々のスキンケアによって療養者が健やかな皮膚を維持し、ご家族とともに笑顔で安心して生活していただけるよう、ご自身のケアの振り返りや、スキンケアのテキストとして、色々な場面で本書をぜひご活用ください。

 

新刊情報

在宅療養者のスキンケア

健やかな皮膚を

維持するために

 

岡部美保/編

●B5 判・208 ページ

●定価 3740円

(本体3400円+税10%)

ISBN 978-4-8180-2522-6

発行 日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

 

 

 

基本の知識:在宅療養者の皮膚の理解

第1章 在宅におけるスキンケアの意義、目的/第2章 皮膚のはなし/第3章 栄養のはなし/第4章 創傷のはなし

実践の知識:アセスメントと予防的スキンケア

第1章 スキンケアの基本(①洗浄のスキンケア/②保湿のスキンケア/③保護のスキンケア/④医療用テープの知識と使い方)

第2章 だれにでも起こるスキントラブル(①ドライスキン/②浸軟/③浮腫/ ④真菌感染症(白癬)/⑤低温熱傷)

第3章 ハイリスクな療養者のスキントラブル(①失禁関連皮膚炎/②スキン–テア/③褥瘡)