地域ケアの今(53)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

前例にとらわれずに知恵を絞るべき時代

 

文:鳥海房枝

 

書類作成に忙殺される職員

 

先日、なにげなく見ていたテレビ番組で子どものいじめ問題が取り上げられ、識者や文化人(?)がさまざまなコメントを出し合う場面がありました。そこで、教師経験のある教育評論家が「教師が子どもと直接接する時間が大幅に減っている」と言い、その理由として、今の教師は必要書類の作成に時間が割かれ、大変忙しくなっているとのことでした。どこかで聞いた話に似ていると思いながら、第三者評価で訪れた保育所での保育士の姿や、高齢者ケア施設で働く介護職の置かれている状況に結びつけて考えてみました。

 

保育所で働く保育士は、子どもの昼寝時間を利用して保護者と交わす連絡帳に必要事項を記入し、そのほかにもさまざまな提出書類を作成しています。うまく眠れずにぐずる子どもをおんぶして「書き物」をする保育士の姿を目にしたこともあります。また、特別養護老人ホームなどの高齢者ケア施設でも、利用者へのさまざまなケア実施項目の記録(パソコン入力)や、各種委員会・行事などの議事録、物品請求書などの膨大な書類作成があります。それ以外にも、「生活の場」であるがゆえに生活にまつわるさまざまなことが発生します。しかも、清掃や調理のように作業範囲が明確なものは委託したり、担当者を配置したりすることが可能ですが、実際の現場には、誰の仕事にもなっていない「隙間」が満載です。逆に考えれば、この隙間があることが生活なのかもしれません。そして、これらの隙間に気づくのは、利用者の一番近くにいる職員、すなわち介護職・看護職です。ところが、書類作成などで多忙になると、隙間は無視されるか、後回しにされがちです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2020年2月号)