SPECIAL BOOK GUIDE “地域包括ケア時代の訪問看護”を徹底解説『平成29年版 看護白書―訪問看護の新たな展開』刊行!

 

看護界の重要度の高いテーマを取り上げ、看護職として今押さえておくべきことをタイムリーに解説する公益社団法人日本看護協会編『看護白書』。平成29年版は「訪問看護」をテーマに、小児から高齢者までの“全世代を対象とした地域包括ケア”における看護の役割と、訪問看護ステーションおよび病院双方の視点から「生活と医療をつなぐ看護」の実践を解説しました。訪問看護の動向を知り、今後の取り組みを考える上で役立つ1冊です。

 

 

 

■訪問看護の充実に向けた「3つの視点」
地域包括ケアシステムの推進により、日本の医療は、生活者としての療養者を最期まで支える在宅医療へと移行しつつあります。訪問看護は“地域における看護の最前線”としての役割が期待され、その拡充が喫緊の課題となっています。
日本看護協会が2015年に公表した『看護の将来ビジョン〜いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護〜』では、看護職は「疾病」をみる医療の視点だけではなく、「生活」の視点を持って人々を支えるための役割を発揮していくことを提言しました。また、これまでの医療について「人的資源と知識、経験の蓄積は医療機関に集中してきた」と指摘し、今後、地域で活動する看護職員数を大幅に拡充することや、地域における看護機能を強化する方向性を示しました。ここでは、訪問看護師だけではなく、医療機関の看護職も主体的に地域に出て行き活動するなど、訪問看護ステーションと医療機関の垣根を越えた取り組みが必要とされています。
このように、あらゆる場の看護職が「生活と医療をつなぐ役割」を果たすためには、①小児から高齢者までの全世代型の地域包括ケアシステムへの参画、②訪問看護の機能強化、③訪問看護の人材確保と育成が課題であるとされています。本書はこの3つの視点から、これからの在宅療養を支える看護の役割について特集しました。

 

■<総論>制度・政策、訪問看護の現状を解説
本書は4章で構成されています。
総論の「1章 訪問看護の可能性・新たな展開」では、在宅医療に関する制度・政策や訪問看護の現状を概観しました。訪問看護ステーションは急激に数を増やしているものの、人員規模は「5人未満」が約5割を占め、赤字経営に陥りやすいなど経営的に不安定な事業所が多いのが現状です。本章では、在宅療養を支えるためには「経営の安定化」が鍵を握ることを、詳細なデータを示しながら解説しており、課題解決の糸口を見いだすことができる内容です。
「座談会」では齋藤訓子氏(日本看護協会副会長)の司会のもと、地域で先駆的に活動されてきた医師、訪問看護師、病院看護管理者、介護支援専門員、行政保健師の方の活発な議論をとおして、訪問看護の方向性を明らかにしています。

 

■<各論>訪問看護ステーションと病院の垣根を越えた取り組みを紹介
続く2章〜4章の「各論」では、前述した訪問看護の3つの課題について、訪問看護ステーションと医療現場双方の視点から最新の取り組みを掲載しました。「2章 地域包括ケアへの参画」では、看護小規模多機能型居宅介護や居宅介護支援、児童発達支援など、地域のニーズに合わせて多角的に事業を展開する訪問看護ステーションの事例を紹介。また、病院から地域へ出て行く取り組みとして、病院の訪問看護、退院支援や同行訪問による在宅療養支援を解説。さらに、“全世代型の地域包括ケア”を支える視点から、NICU退院児の在宅療養支援や精神障がい者の地域移行・定着支援について紹介しています。
「3章 訪問看護の機能強化」は、経営の安定化や労働環境・業務体制の整備に取り組む訪問看護ステーションの実践をまとめました。機能強化型訪問看護ステーションによる大規模化・多機能化、業務の効率化に向けたICTの活用などをわかりやすく解説しており、ステーション運営の要点をつかむことができます。
「4章 訪問看護の人材育成」は、訪問看護の提供体制の最大の課題といわれる「人材確保・育成」がテーマです。「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」活用による訪問看護師の教育、医療機関から地域の訪問看護ステーションへの研修・在籍出向を行う「訪問看護出向システム」、「訪問看護教育ステーション」による確保・定着への支援、新卒訪問看護師の育成などを解説しています。人材確保・育成をめぐる最新の動向を示すことで、訪問看護人材の「量」の確保だけではなく、「質」の向上が重要であることを提言しています。

 

■地域での看護の醍醐味に触れる
2018年は診療報酬・介護報酬ダブル改定や第7次医療計画・第7期介護保険事業計画が開始される年であり、在宅医療の充実に向けてさまざまな施策が進められています。その一方で、報酬や制度に拠らない、現場の看護職が主体となった在宅ケアの体制づくりも広がっています。本書ではそうした看護職の創意工夫と努力による実践も多数紹介しています。これらの実践を読み解くことで、地域の人々のニーズに応えることから始まる「看護の醍醐味」に触れることができるはずです。
患者さん・利用者さんへの質の高いケアに日々挑戦されるすべての場の看護職に、本書をご活用いただきたいと思います。

 

巻末の「資料編」で、看護界の最新動向を豊富な図表・資料により解説しているのも『看護白書』の特徴。看護をめぐる法制度や厚労省検討会の概要、日本看護協会の政策提言、ガイドライン策定などが一目瞭然です。

『平成29年版 看護白書』
訪問看護の新たな展開―地域包括ケアへの参画/機能強化/人材育成』

●B5判 308ページ
●定価(本体3,200円+税)
ISBN:978-4-8180-2065-8
日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)

 

【主な内容】
◆1章 総論 訪問看護の可能性・新たな展開
訪問看護の新たな展開/[座談会]“全世代型の地域包括ケア”における訪問看護への期待/在宅医療・訪問看護の現状と今後の方向性
◆2章 各論 地域包括ケアへの参画
病院看護師と訪問看護師が連携して取り組む在宅療養支援/NICUから退院した児を地域全体で支える取り組み/精神障がい者の地域移行・定着支援/認知症グループホームにおける看取りの支援 他

◆3章 各論 訪問看護の機能強化
機能強化型訪問看護ステーションが地域で果たす役割/業務の効率化と質の向上に向けたICTの活用/訪問看護ステーションに在籍する皮膚・排泄ケア認定看護師の褥瘡コンサルテーション 他

◆4章 各論 訪問看護の人材育成
看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)活用による訪問看護師の教育/訪問看護師の確保・育成・定着に向けた東京都訪問看護教育ステーションの取り組み/「訪問看護出向システム」による訪問看護の人材育成/新卒訪問看護師の育成・受け入れ 他

◆資料編
看護職の年次データ<就業状況><養成状況><労働条件>/看護政策関連の動向/日本看護協会の主な取り組み

 

-「看護」2018年1月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –


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